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二十九話「上級魔法使いと書いてアークウィザードと読む」

「ウチのパーティーから出てってくれる? って、わざわざこれやる必要あるの?」

 横領したおっさんを衛兵の詰め所に突き出した翌日。町に残る側のパーティーリーダーとして残ることになったアイリスさんに俺は尋ねた。

「だってヘイルには必要でしょ、追放成分」

「追放成分て何?!」

 追放はとうとう俺に必須の成分になってしまったらしい。って、それだけ聞いたら意味不明かもしれないが、アイリスさんの中で俺はいったいどんなイメージに変貌しているというのか。

「割と急な出発になってしまったものね。本来なら追放用に数日分の人形でも作って渡そうと思ってたけど……」

「いらないから。と言うか追放用の人形って」

 いったい何がどうなってそんな話になったんですか、アイリスさん。

「そうね、追放する人形に災厄とか不幸を引き取ってもらって川に流すとか」

「どこの伝統行事?!」

「いいじゃない、伝統行事。ここでこの地方の危機を救うみたいな大活躍をしたら、伝統行事として本当に残るかもしれないわよ」

 親指を立ててさわやかに笑顔を浮かべたアイリスさんに俺が残ってたまるかと叫んだのはきっと仕方ないと思う。たとえそれが、俺の緊張をほぐす冗談だとしても。

「まぁ、詳細が解かってないのは不安かもしれないけれど、あなたの実力、ううん。あなたたちの実力なら大丈夫よ。ユウキと私が居なければ、固有技能の副作用も働かないし」

「確かにね。その辺踏まえてパーティー分けもした訳だけど」

 俺と一緒に現地に足を運んでくれるのは、狂戦士、騎竜射手(ドラグアーチャー)精霊治療師(エレメントヒーラー)、召喚師、悪魔使い、死霊術師の計六名。騎竜射手は文字通り竜にまたがり上空からの強襲や遊撃、援護射撃などを得意とする弓使いなのだが。

「またがる竜が魔への重圧――アイリスさんの固有技能の影響を受けちゃうもんね、彼は」

 召喚師、悪魔使い、死霊術師の三名も召喚もしくは使役対象が影響を受けるためアイリスさんとは相性が悪い。精霊の力を借りて味方を癒す精霊治療師の精霊は魔物分類ではないようで影響も受けないようだがアイリスさん自身が回復もできる魔法職である為、バランスを考えてついてきてもらうこととなり。

「七人パーティーなんて本当に久しぶりだけど、事が事だからね。それじゃ、俺は騎竜射手のクレインさんに先行偵察お願いしてくるよ」

 片手を上げて告げれば、返事も待たず俺は踵を返した。機動力があり空を行軍できる彼に前方の偵察を任せ、地上は罠師の俺が魔物などの奇襲を警戒。魔物を見かけた場合は余裕があれば強襲し屠り、躯は死霊術師の少女がアンデッドに変えて戦力に組み込む。

「間に合う、よね」

 否、間に合わせなくてはいけない。口からこぼれた微かな不安を振り払うように軽く頭を振り、宿を出て向かうのは、町の入り口にある騎乗動物や魔物用の厩舎。クレインさんはそこに居るはずであり。

「ああ、居た。出発の準備してる。おー」

「ヘイル様ぁ」

「え゛」

 実際、弓と矢筒を背負った姿を見つけて呼びかけようとした俺は、聞こえるはずのない人物の声に凍り付いた。

「ヘイル様、お待たせしました」

「え? え? お待たせしましたって、伝令はどう――」

 嬉しそうなMな騎乗者(ライダー)の少女を前に訳が解からなくなりつつも辛うじて声を絞り出した俺は。

「あたし、ようやくヘイルさん達のお役に立てますね」

 最後まで言い終えるより早く、聞き覚えのある声を知覚した。その声の主は、俺の記憶が正しければ、空間魔術師。

「この方の転移魔法であちこち送っていただいたのです」

 おおよその理解したいきさつをMな少女がなぞり、俺は頭を抱えた。

「出発目前にして状況が大きく変化した件について」

 もうこれは編成とか作戦とか完全に練り直しじゃないですか。いや、戦力の増強はありがたいけれど。

「ユウキは何か言っていた?」

「『ハーピーの雛でござったら心配無用。前に拾った双子の錬金術師が預かってくれたでござる。故に拙者もそちらに向かう所存』と」

 伝令を終えたなら会っていると見てMな少女に訪ねれば、やはり会っていたらしくそう明かし。

「双子の錬金術師……ああ、そういえば居たような」

 記憶をひっくり返しつつ少しだけ安堵する。ユウキ一人が面倒を見るというのに押し付けておいてアレだが、若干の不安を覚えていたのだ。

「まぁ、ユウキだからね」

 当人が聞いたら安定の信用のなさとか言うかもしれないが、色々やらかしてきたのも事実なのだ。

「と、アイツの話はこれぐらいにして、空間魔術師が居るなら行軍がずっと早くなるし、最低でも作戦も修正を加える必要があると思うから宿に行こう」 

「はい」

「ええ」

 俺が促せば二人は頷き。

「クレインさんも来てもらっていいかな?」

「承知した」

 クレインさんを加えた俺たち四人は宿に向かって歩き出した。


とりあえず空間魔術師の伏線は回収したけど、番外やら裏で補足しないといけないキャラも増えて行く件について


そう言う訳で次のお話の前に捕捉を入れます。

8/2の更新分として現在三話に捕捉回を追加済み。



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