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二十八話「準備も大変」

「もういいや、お前使えないし。ウチのパーティーから出てってくれる?」

 おびえていた夜は訪れず朝が来て、俺は何故か一人のおっさんに最後通告を突きつけていた。

「物資の調達を任せたら質の悪いの安く買ってきて渡したお金との差額を懐に入れるとか……」

「なっ、見て」

「そんな暇はないよ。お前がやらかした時、隣に居たのがたまたま俺たちの知り合いだっただけ」

 朝一番にやってきて協力を申し出てくれた冒険者が数名。ありがたいがそれだけで人員として足りるとは思えず、ギルドや人脈関係で冒険者を紹介してもらい、大所帯になり始めた昼頃だったか。大きく動けば、人目を惹く。まだこの町に来て日の浅い俺たちはカモだと思われたらしく、手伝わせてくれと売り込んできた冒険者の一人が、目の前のおっさんだったと言う訳だ。

「念のために簡単なお使いを頼んだらこの始末って、俺たち舐めてたりする? こう見えてもSランクなんだけど」

 人が多ければ目も届かなくなると高をくくったのかは知らない。以前突き出した運搬人の様な不心得者が居ることも加味して信用できる冒険者に同じ方面での物資調達をお願いしたら、オッサンの横領を教えてくれて、今に至っている。

「とりあえず眠ってもらうね。たぶん目が覚めるのは檻の中だろうけど」

「待、うぷっ」

 こういう時、罠に使う眠り薬を携帯しておいてよかったとしみじみ思う。

「はぁ、とりあえず一つ片付いたけど……」

 きっとこの後でアイリスさんに追放できてよかったとか何とか言われることになるだろうと考えると若干憂鬱になる。

「まさか、こんな急に慌ただしくなるなんてなぁ」

 そのおかげで昨晩はMな少女の襲来に身構えることなくたっぷり睡眠がとれた訳だが。ちなみにその騎乗者の少女はリサーブトに向けて早朝にこの町を立っている。暗黒神の崇拝者とやらが何を企んでいるかは不明だけど、何かやらかそうとしてると忠告してくれたのは俺たちとパーティーを組んで実力を知っている人物なのだ。

「Sランクパーティーでも忠告しないと危ういと思ったとなると、ね」

 今の四人パーティーでは対処不能と見るべきだ。今はユウキがパーティーに居ないし、何かやらかすのを待ち構えて迎え撃てばいいだけと言う訳でもない。

「どう考えても巻き込まれそうな『勇者様』の救出には赴かなきゃならないし」

 何をやらかすかわからないからこそ戦力をウサギ女勇者の向かった村方面だけにはつぎ込めず。

「何かあった場合、ここの防衛にもSランクパーティーを配置しておきたいよね、うん」

 アイリスさんをリーダーに集まってくれた人で一つパーティーを作るか、ユウキの合流を待ってユウキをリーダーにしたパーティーを組むか。この町には俺たちと面識のないSランクパーティーも居るが、協力を求めたなら色々と説明を要求されるだろう。だが、この国では暗黒神信仰が禁止されているために情報元を明かせない。

「細かい説明を省いて協力をお願いできるとしたら物資の調達とかだけど、使えないとか言う以前の問題が出現するし」

 八方ふさがりには程遠いがめんどくさいというかわずらわしいと思ってしまうのも仕方なく。

「それでも食料とかはある程度揃ったもんなぁ」

 出発の時は近い。アイリスさんが村に行くパーティーに参加するかはユウキ達と合流できるかにかかっているが、ユウキは徒歩でリサーブトに向かっていた。

「騎乗者の子は他の人への伝令も頼んでるし」

 ユウキを馬の後ろに乗っけて二人乗りで引き返してくる訳にもいかないとするなら合流は難しい。

「ユウキがたまたま移動手段を持つ知り合いと会って徒歩以外でこっちに向かってるっていうなら話は別だけど」

 世の中がそんなうまく行くモノでないことは、ウサギ勇者と再会して話を聞くだけの旅がこんな大事になってしまっている事態によって証明済みである。

「まさか同じ暗黒神を信仰する者に『何か企んでますよ』ってバラされるとか暗黒神信仰者の皆さんも思ってないだろうし、今ならまだ相手の虚をつけるはず」

 それに伝令へでているからこそ今のうちに決着をつけてしまえば、Mなあの少女の身に危険が及ぶ可能性も低い。

「色々アウトでも俺に好意を持ってくれてるのは確かだし」

 言い訳じみたつぶやきをこぼし、俺は転がってる横領犯を担ぎ上げた。


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