二十七話「何だろうこのシリアスな空気はって思う」
「いくらなんでもそこまでアイリスさんに世話はかけられないよ」
そもアイリスさんは伴侶を見つけるという理由でこのパーティーに居るのだから、誤解を招くようなことはさせられない。
「大丈夫、どうしようもなくなったら、いつもみたいに追放するからさ」
幸い、ウサギ女勇者の足取りもつかめたのだ。まして、待っていればあちらからこの街にやってきてくれるならあの少女の機動力に頼る必要ももうないかもしれない。
「そうだ、機動力があるんだから伝言を託してユウキを探してもらうってのも良いかもしれない」
あのMな少女からしたら俺の側に居たいかもしれないけれど。
「ヘイル……」
「わかってる、全部こっちの都合だし最低だって思われても仕か」
「まだ、引きずってるの?」
言葉が、続けられなかった。俺の名を呼んだアイリスさんの視線を自嘲と共に流そうとして、俺は失敗し。
「アイリス、さん?」
「あの……暗黒女神官の子のこと」
「え゛」
想定外の人物が飛び出して顔を引きつらせる。
「ごめん、何であの子のことを此処で持ち出されるのか、意味が解かんないんだけど?!」
アイリスさんの言うのは昔に俺達がパーティーに加え更生させた人物のことだと思う。
「確かに処分するしかないかなと思ったけど結果的に更生したレアケースではあったよ?」
ただ、俺の記憶の中ではフラグ的なモノが立った覚えもないし、告白されただとか別れた後に俺たちを追いかけてきたということもなかったはずだった。
「そりゃ、立ったフラグに気付かなかったって前科がつい最近だから何を言ってるって思われるかもしれないけど……」
アイリスさんの指摘は、半分当たっている。引きづっているという部分だけは。
「ヘイル」
再び名を呼ばれ、アイリスさんの方を見れば俺が何か言うよりも早く、口を開く。
「会ったのよ」
「え?」
「あの暗黒女神官の子に、この町で」
呆然とする俺に言葉の爆弾を投げつけると、くるりと背を向ける。
「お礼と忠告を貰ったわ。この国では暗黒神の信仰は禁じられてるけど、隠れて信仰してる者は居る。その連中が何か企んでるそうよ。しかも、私たちに恨みでもあるのかしらね、やらかそうとしてる場所とあの勇者の子が向かった場所がほぼ同じと来てるのだから」
「何、それ」
順調にことが進むと思った矢先に立ちこめる暗雲。
「そう言う訳だから、あなたの言った伝令を頼むって話、ユウキだけでなく近くに居て私たちに好意的な冒険者あてにも頼むことになるかもしれないわ」
「好意的って……俺たち『ざまぁ』されない程度とはいえこき下ろして追放とかやってるんだよ? 好意的な冒険者なんてどれだけいると――」
冷静に話すアイリスさんに俺は声を荒げかけるも。
「最悪の場合、ルーデン方面にも伝令を頼むわ場合によっては押しかける加入希望者がセットでついてくるかもしれないけれど、打てる手を打たず後で悔やむよりマシよ」
「アイリスさん?! いや、打てるだけの手を打つってのは俺も賛成だけど」
思いきりが良いというか何というか。
「大丈夫、私にいい考えがあるの。さっき暗黒女神官の子に会ったって言ったけど、流石有名な鉱山の町ね。質の良い武器や道具を求めて集まってきた冒険者の中に知ってる顔がいくつも」
「ちょ、まさか」
「ええ、事後報告になってしまって申し訳ないけど、すでに協力と伝言は依頼済みよ」
「うわぁ」
どうやら俺がMな子の事で悩んでる裏でアイリスさんは色々動いてくれていたらしい。置いてきぼりにされたとも言えるかもしれないが、状況を鑑みれば感謝してしかるべきであり。
「悩んでる暇何てないってことかぁ」
「そうね。大丈夫、この騒ぎが収まったら追放三昧だってきっと可能よ。押しかけ加入希望者がより取り見取りでしょうし」
嘆息する俺にアイリスさんは親指を立てつつウィンクする、ただ。
「いい加減俺が『追放したい病患者』だって間違った認識は改めてくれない?」
何をおいても譲れない主張をしつつ俺はアイリスさんを半眼で見たのだった。
怪しくなる雲行き、番外とのリンク。
暗黒神信仰者たちの企みとは?
たぶん次回に続く。




