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十五話「城塞都市リサーブト、そして守護騎士」

「もういいや、お前使えないし。ウチのパーティーから出てってくれる?」

 ござるトリッパーを軽蔑の視線で貫きつつ俺はいつもの台詞を口にした。

「またで拙者でござるか?!」

 とか、ユウキは大袈裟なリアクションをとるが、これにも理由はある。

「ほら、あの子追い出してからパーティーに加わったメンバー居ないし、あの子についての言もね」

 このおっぱい狂いが先日の子にして口にしたコメントは、ある意味で平常運転ではある。

「悪役令嬢って性格以外はヒロインのスペックを完全に凌駕してるものでござろう? だったらもっとおっぱいが大きくていいはずでござるッ! 拙者としては爆くらいは――」

 なんて自身の偏見を語るのはまだマシな方。俺は一週間少しのことを思い出す。

「散々痛めつけた上でと言うリクエストでござるし、拙者も心を鬼にしておっぱいを揉むというセクハラを……ん? アイリス殿、その鈍器は何でござるか? はは、い、今のは冗談でござ」

 あの時、途中で言葉を途切れさせたユウキの為に宿の花瓶を弁償するハメになったのだ。お仕置きとして追放ネタで弄らないとこっちとしても心のモヤモヤが晴れないのである。

「まぁ真面目な話、性犯罪者をこのまま隣国に運び出しても良いものかと」

「そうよね」

「犯罪者扱い?!」

 いつの間にかやってきて同意するアイリスさんを含めた俺達の扱いにユウキは衝撃を受けたっぽい反応を見せるが、セクハラをほのめかしたりしたのだから充分アウトだと思う。

「それにこのまま誰も追放しないとヘイルの『誰か追放しないと体調崩しちゃう病』が悪化してしまうもの」

「何それ?! 何時の間にそんな病気になったの、俺?!」

 おかしい、ユウキを弄っていただけだというのに、火の粉がこっちにも降りかかってくるとか。

「まぁ、冗談はともかく、少しは自嘲しなさいよ、ユウキ」

「何か自重のニュアンスがおかしかった様なきがするでござるが……そうは言われてもでござるね、拙者、いつか元の世界に戻る訳でござるから……ヘイル殿みたいに無思慮にフラグを立てる訳にもいかないのでござるよ」

「あれ? 今度は何か俺がディスられてない?」

 気のせい、気のせいだよね。

「言うなれば、今やってる追放と同じつもりでござる。安易に好意を抱かれぬ様、拙者と手心を鬼にしてやっているのでござるよ? と言うか、拙者が本気を出せばおっぱい美少女ハーレムとか超余裕でござるから」

「ねぇ、アイリスさん。ユウキがとうとう行き着くところまで行っちゃったんだけど。現実と妄想の区別がつかないなんて」

 俺は悲痛な顔で俯いた。

「あなただけのせいじゃないわ。こんなになる前に手を打つべきだったのよ。性転換手術とか」

「ちょっ?!」

「ああ、前に魔法で強制的に性転換させたら大人しくなるかって試みようとしたもんね。ユウキの固有技能のせいで部分的に男性が残って大惨事になったけど」

 歩くセクハラ言動機が声を上げた様な気もするが、スルーする。そんな事よりあの性転換魔法失敗事件は無惨だった。うっかりでユウキが着替えているところに出くわしてしまった時とか、謝りつつ背を向けるべきなのか何事も無かった様に振る舞うべきなのか迷って固まってしまったし。自前の胸を手に入れたござるトリッパーが嬉々として自分の胸を弄る様にドン引きしたりして。

「魔法が中途半端に掛かったから解除出来なくて結局効果が切れるまで放置せざるを得なかったのは、ええ……」

「あの失敗を教訓にパーティーに加えられそうな薬師を探したけど、そう都合良く見つかることもなかったし」

 ユウキの残念部分は棚上げされて今に至る。

「いやいやいや『今に至る』じゃないでござるから! それより気にすることがあるでござろう?! 拙者達、城塞都市リサーブトに辿り着いたのでござるよ? 出国手続きの準備とか路銀確保のため冒険者ギルドに顔を出して依頼探しとか拙者を玩具にすることよりやらねばならぬ事が――」

「「その常識的な面をなぜいつも前に出さない?」」

「あ、ごめんなさい」

 俺達の揃った言葉のトーンにユウキはいつもの口調を語尾につけることすら忘れて頭を下げた。


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