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十三話「運搬人も色々。城塞都市へ向かう途中」

「もういいや、お前使えないし。ウチのパーティーから出てってくれる?」

 城塞都市リサーブトへ向かう途中、まさかこの台詞を口にすることになるとは思わなかった、と言うと嘘になる。ここはとある町の狭い路地。

「な、何でだ! 使えないってどういう事だ!」

 俺の軽蔑の視線を受け、顔を赤くして喚くのは途中の町で雇った運搬人の一人。彼らの仕事とは運搬の名の通り荷物を運ぶこと。

「言葉の通りだけど?」

 運搬人の仕事は冒険についてきて荷物持ちをしたり、行商人の共をして商品を運んだり、依頼されて隣の町まで配達をしたりと様々であり、運搬人と言っても荷物持ち専業とか配達のみなど一つの業務しか行わない者もいれば、頼まれればどの形の仕事でも引き受ける者もいる。俺が今まさに追放しようとしているのは、どの形でも引き受けるタイプであり。

「いや、それじゃ生ぬるいかな。頼んだ荷物をグレードの低いモノと取っ替えて、本来のモノを売っ払うとかさ」

「なっ」

 中には使えないを通り越し背信行為というか、窃盗や横領とか横流し的な犯罪をやらかす者も居たりする。

「まぁ、もうわかると思うけどさ、出ていって貰った先は檻の中だから。タチの悪い運搬人が居るって噂があるから調査して、噂が本当なら捕まえてくれって依頼だったんだけどさ」

 路銀の足しになるかと思って俺達は二つの依頼を引き受けていた。一つは今バラした不良運搬人の捕縛依頼。もう一つは表向きの依頼でもある穀物や塩などの輸送依頼だ。

「くっ」

「おっと」

「のわぁっ?!」

 顔を歪ませ逃げようと踵を返しかけた運搬人は俺が足下のロープを踏むと悲鳴をあげてすっ転ぶ。予め簡易な罠を仕掛けておいたのだ。ロープを踏むと脛の高さぐらいにピンとロープが張られる程度の簡単な罠を。

「じゃ、ロープはこのまま再利用しますか」

 罠だけでなく縛るのにも使えるからロープは便利だ。

「馬車は通れないかわりに何日もショートカット出来る山道があるこの辺りなら真面目に仕事しても充分商売になる筈なんだけどなぁ」

 山道の途中には村もあり、そこに生活物資を運んで行く仕事だってある。

「まぁ、死霊術師もピンキリだったし、結局の所人次第、か」

 ブツブツ呟きながら悪態をつく運搬人を押さえつけ、ロープで縛ると嘆息し、空を仰ぐ。

「まぁ、あとはコイツ突き出せば依頼報酬も確定するし、柔らかい寝床も数日ぶりだ」

 こういう世界で徒歩の旅をすれば野宿もまぁ、仕方ない。だからといってそれを歓迎できるほどのM気質を俺は持ち合わせて居らず、久しぶりのベッドが嬉しかった。

「南よりの街道を通るとルーデンに近づいちゃうし、そうなると北よりで険しいルートしかなかった訳だけど、そう考えるとベッドが久々とか険しい山道だったのも自業自と……いや、止そう」

 南側のルートはそもそも俺達がルーデンから先日まで滞在していた街へと旅した時に通ったルートなのだ。リサーブトに向かう旅人ならまず間違いなく選ぶ道でもあるけれど。

「ルーデンで一時パーティー組んでた人達と遭遇する可能性が高すぎるもんなぁ」

 あちらでは嫌われるのではなく慕われていたとは思うのだが、再会して面倒なことにならない保証はない。街は違えど俺のあずかり知らぬ所でフラグが立ってしまった上Mに目覚めてしまった子だっているのだ。

「うん、信じよう。選択が間違いではなかったと」

 ウサギ勇者が目指したのは、おそらくリサーブトの先にある鉱山の町。鉱山と名を冠すだけあって道は険しい。昨日までの山道だってその練習だと思えば、いい。


「――というわけで、コイツが依頼書の悪質な運搬人です」

「なるほど、ご協力感謝します」

「いえ、報酬貰ってしてる仕事ですから。では」

 俺は捕らえた運搬人を衛兵の居る詰め所に着き出すとアイリスさん達の待つ宿に向かって歩き出した




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