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百三十一話「結果」


「その後のことはあまり話したくない」


 誰かに、例えば馬車でジャック枢機卿の館へ共に来なかったパーティーメンバーに尋問の時のことを聞かれたなら、俺はそう答えたと思う。


「……とりあえず、情報は引き出せたわけだけど、何だろう、このやるせなさは」


 アイリスさんの魔法による脅迫は効果があった、効果はあったのだ。


「おん、な……女に?」

「ええ、これが男に見える?」


 呆然とする襲撃者へダメ押しのつもりか、携帯用の鏡を取り出し、襲撃者自身をアイリスさんは写して見せたのだが。


「……いい」

「え?」

「かわいい」


 襲撃者は自分の姿に見とれ、恍惚とした表情でそう漏らしたのだ。


「まさか、新しい扉を開かせてしまうとか、想定外だわ」


 襲撃者はむしろこのまま女で居させてくれとか言い出し、喜ばれたのでは意味がないという名目でアイリスさんは魔法に効果時間があることを誤魔化し、襲撃者を男に戻した。


「かわりに『質問に答えたら一定時間女性にしてあげる』と提案したら聞いても居ないことまで話し出すし、本当にもう、なんなのかしら」

「結果だけ見れば大成功の筈なんだけどね」


 遠い目をするアイリスさんに俺はそれぐらいしか言えず。


「そうね、せめて結果が出たことでよしとすべきよね。それで、襲撃者は単独犯。ただし、凶行に及ぶよう煽った人物が居たようでもあるけれど」

「十中八九、その煽った人物とやらは魔王の息がかかってるよね」


 幾ら対立している相手だからと言っても、直接取り除いてしまおうなどとすれば、問題にしかならない。暗殺を試みたことが表沙汰になれば、事の正否にかかわらず処分されるであろうし、悪名を被る事にもなる。真っ当な思考力があるなら、身内が凶行に及ぼうとする場合、逆に止めるはずだ。


「トカゲの尻尾よろしく切り捨てるつもりなら話は別だけど……」


 どうなるかを断定するには情報が足りない。


「わしとしては情報を最大限に利用し、あやつらの発言力を落としておきたくはあるな。そうすれば、わしに対してもお主らに対しても良からぬ事を些少なりとも企みにくくなるであろうからな」

「んー、まぁただでさえ謀略の魔王が何をするつもりなのか分からないのに、光神教会って大枠のカテゴリーで味方に居ながら足を引っ張って来る輩だもんなぁ。馬鹿をやらかしづらくなるのはありがたいけど……」

「気がすすまないの?」


 尋ねてくるアイリスさんにそう言う訳じゃ無いよと頭を振る。


「ただ、もっとめんどくさい裏があるんじゃないかって身構えてたからかな『本当にこれでいいの』って問いかけてくる自分が居てさ」


 ポカを何度かやらかした過去があるからだろうか、何か見落としてないか気にしてしまうのだ。


「枢機卿に幾つか懸念事項を任せられるなら、残ったことに専念出来る。結構なことだとは思うんだけど……これで貸し借りはナシですか?」

「それはない。わしは命を救われて居るし、あやつらの発言力を落とそうというのはわし自身も望むこと。『これで貸し借りはナシだ』などと言うような厚顔さは持ち合わせて居らぬ」

「だ、そうよ」


 良かったわねヘイルとアイリスさんが言い。


「それはそれとして、光神教会関連の問題が幾つか片づいたなら、次はあれね」

「あぁ、行方不明って使用人の事について聞かせて貰っても?」


 俺は漸くジャック枢機卿と接触して聞きたかった話を切り出した。


「うむ、使用人か。まずその者だが、里帰りに出たはずが、故郷に姿を見せず、かと言って此方に戻ってきたという話も聞かず……城壁をくぐり王都の外に出たところまでは確認出来ておるのだが」

「あぁ、外に出たんだ」

「わしが里帰りの許可の為に一筆したためた手紙を城壁の入り口にに詰める兵が確認して居るし、手紙を見せた人物も件の使用人と特徴が一致しておる」


 成る程と相づちを打つが、分かったのは王都の外にでたのが間違いないという事のみ。


小説大賞、結果が発表されましたね。

応募用に書き始めた作品でもありましたが、他のコンテストに出す作品を書き始めようにも、これを放り出す訳にもなぁ。


と言う訳で、続くはずです。


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