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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会
97/188

97.試されるカナ

 カナが答えに窮しているときも、鼓動は続く。


 まるで、()かされているようだ。



 炎竜を纏う?


 体内にいるのと、何が違う?



 まず、そこが理解できない。



 もし、「はい」と答えて、「その程度の心でうぬぼれるな」と言われたら?


 食い殺されるのでは?



 考えが悪い方へと傾いていく。


 そんなカナへ、炎竜は畳みかけて問う。



『今一度問おう。

 汝、我を纏うに値する心の持ち主か?』



 カナは、断崖絶壁に追い詰められた気分になった。


 それよりも、火炎に対して防御を施しているとは言え、長時間は耐えられない。



 早くここから抜け出ないと。


 迷っている余裕などないのだ。



『何を迷っている。

 汝は、己の心がわからぬか?』


 完全に心が読まれている。


 でも、カナは答えを回避し、炎からの脱出を優先する。


「いいえ、そんなことはありません!

 今は、ここから脱出することが先です!」


『はいか、いいえか。

 それも言えぬのか?』


「ですから、それは炎を抜けてから――」


『ならぬ。

 今すぐ、我の問いに答えよ』


「……」


『答えぬのなら、汝の防御を解除する。

 勝手に灰にでもなれ。

 我は、他の者へ宿を変えるまで――』


「わかりました。

 あなた様を纏うにふさわしい心を持っていると思います」


『それは誠か?』


「……はい」


『なら、我を封印する目の前の女を灰にせよ』


「えっ!?」


『その灰をも焼いて、存在ごと消し去れ』


「大切な友達です!

 そんなことは出来ません!」


『今から、力を与えよう。

 女を一瞬で灰にする力を』


「やめてください!」


『我がこの炎を消し去ると、汝は自分の意志で女を灰にする』



 炎竜の言葉が終わると同時に、カナの周囲の炎が煙のように消えた。



 全身を撫でる涼しい風。


 耳朶に響く観衆のどよめき。



 炎の世界から一気に現実に引き戻され、カナは戸惑っているはず。


 ところが、なぜか何事もなかったような顔をしているのだ。



 彼女は、前屈みだった姿勢を元に戻す。


 視界に飛び込むのは、イズミの呆気にとられた顔。



「あらあら、煉獄からのご帰還?」



 イズミが、イズミではない声で皮肉っぽく嗤う。


 そんな相手に、カナは左手を突き出し、冷たく言い放つ。



「殺す」


「まあ、恐ろしいことを……。

 火の中で頭がおかしくなったのかしら?」



 カナは、ゆっくりと前進する。



(くのつぎ)一姫(いつき)

 今すぐ、灰にしてやる。

 灰をも焼き尽くす炎で、存在ごと消えろ」


「ははーん。なるほど……。

 あなたは、炎竜ね。

 ついに覚醒したのね」


 イズミは、ニヤリと笑って身構えた。


 そして、舌なめずりをする。


「憑依した者同士、他人の体を借りて戦う。

 これは面白いわね。

 ウズウズするわよ」


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