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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会

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91.魔法の無効化

 試合が開始されると、急に場内が熱を帯びてきた。


 カナコールとイズミコールが、空中でぶつかり合う。


 旗が、横断幕が、再び揺れる。



 もう二人の会話は聞こえない。



 邪魔立てされた形になり、戸惑うカナ。


 追求を逃れて安堵するイズミ。



 声援が何度も背中を押すので、これ以上の対話を諦めたカナは、強化魔法を発動した。


 カナが諦めたのを確認してから、イズミも強化魔法を発動する。


 先に発動するという挑発的行為は、まだ良心のかけらが残る彼女には、躊躇(ためら)われたのだ。



 一方、リンとドラーゴ・ロッソは、すでに構えに入っていたので、合図と同時に勝負が始まっていた。



 リンは、今いる位置で攻撃を受けると、カナが巻き添いになると判断。


 宙に浮いた状態で左側へ素速く平行移動し、カナから20メートルほど離れた。



 ドラーゴ・ロッソも、イズミに近い位置では戦いにくいことを考えていた。


 なので、リンの動きを見ながら、右方向へ追随して移動する。



 イズミを巻き込まない位置までの移動が完了すると、今度はリンに向かって二歩前進して、咆哮した。


 リンは宙に浮いたまま、前足を上げて短く詠唱する。



 炎で揺らめくドラーゴ・ロッソの口が大きく開かれ、口内が白く輝いた。


 火炎噴射が始まる!


 これを迎え撃つリンの前面には、赤く輝く魔方陣が出現した。



 ゴオオオオオオオオオオッ!!



 巨大な火炎放射器と化したドラゴンの太い炎が、リンを一飲みにしようと襲いかかる。


 だが、リンの魔方陣は、これを難なく食い止めた。



「なかなかやるな」


「口を開けただけで、バレバレだからよ」


「いや、リンだから防げる。

 その子なら無理だろう」


「カナを甘く見ないで。

 あんた、吹き飛ばされるわよ」



 そんな会話は、カナの耳には届かない。


 彼女は、半身の構えを取って、イズミの動きに集中しているからだ。


(おかしい……。

 なぜ攻撃を仕掛けてこないの?)


 さっきからイズミは、ダランと両手を下げて、突っ立ったまま。


 どこからでも魔法で攻撃を仕掛けてこい、と言わんばかりだ。


 睨み合っていても、先には進まない。


 なので、カナは、自分から仕掛けることを決意する。



 右手を突き出して、雷撃魔法の構えを取った。


「――稲妻(ライトニング)!」


 いつもの詠唱で、右手の先に出現した、小ぶりの大きさの白色に輝く魔方陣。


 そこから発射された小さめで横向きの稲妻が、イズミを襲う。



 だが、稲妻は、イズミを直撃する寸前で霧散した。


「――稲妻(ライトニング)!!」


 二度目の稲妻も、届かない。


 数センチ手前で消えてしまうのだ。



 カナの背筋に、冷たい何かが走る。


 右腕が、左腕が、両足が小刻みに震えていく。



 魔法の無効化。



 これが、イズミが隠し持つ宝玉の威力。


 カナの頭の中は、突然、真っ白になり、思考が停止した。


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