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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会
74/188

74.魔女VS魔女

 女性スタッフは、左右をゆっくりと見渡す。


 そして、正面を向いてニヤニヤしながら、声も口調も変えて語り始めた。



「無詠唱で瞬時に人払いの結界を出現させるとは、さすがですわ。

 しかも、この結界、外と中とで時間の流れが違うもの。

 対象者全員を一時的に別空間へ放り込み、解除後は元に戻る、高度な魔法。

 腕は衰えていないみたいですね、蜂乗(はちじょう)マイコさん」


 マイコは、口角をつり上げて、これに答える。


「結界に狼狽えるとか、もう少し一般人を演じ続けてとぼけると思っていたけれど、潔いわね、(くのつぎ)一姫(いつき)


「わたくし、時間を節約して行動するのをモットーとしておりますので」


「なら、すぐ答えて。

 ここで一般人に憑依して、何をしていたの?」


「イケメンの物色よ」


「イケメン?

 歳を考えたら?」


「二百歳でも、若い男にドキドキしますのよ」


「そんな歳の魔女にドキドキされる方が、恐怖で白髪になるわ」


「あら、ずいぶんなことをおっしゃるのね」


「ふー、……何をしていたのかは、潔く白状しない。

 無意味な回答をして、逃げ回る。

 モットーと違うわね」


「正直にお答えしましたのに」


「なら、こちらから言いましょう。

 狙いは、炎竜の覚醒。

 実行犯は、式神。

 あなたは、ここでその監視役。

 失敗した時に備えて、五潘(ごはん)イズミを焚きつけて、明日の試合で彼女に覚醒をやらせようとしている」


「あらあら、見ていたかのように、ズバズバとおっしゃるのね」


「でも、おかしなことが二つあるわ」


「二つも?」


「一つ目は、覚醒の時期。

 ヴァルプルギスの魔宴は来年の四月末。

 それなのに、半年前の十月に炎竜を覚醒する。

 なぜ?」


「今覚醒させれば、魔女への抑止力になりますでしょう?」


「覚醒した炎竜を抑止力に?

 なら、半年間、どこで誰が飼うの?」


「宿主が檻に入れればいいのですわ。

 あるいは、宿主の中へ戻すのでも」


「戻したら、覚醒の意味がないことくらい、わかるわよね?」


「まあ、それもそうですけれど……」


「まず、それがおかしい」


「では、もう一つは?」


「カトリーン・シュトラウスまで覚醒に乗り出したこと。

 なぜ、異国の彼女が炎竜のことを知っているの?」


「さあ……」


「彼女は、召還魔法のスペシャリスト。

 覚醒も得意。

 五潘(ごはん)イズミが失敗する可能性があるから、念のために手先にしたのでしょう?」


「……」


「都合が悪いと、答えなくなるのね。

 逆に、わかりやすいわよ」


「勝手な推測には、お答えしないことをモットーとしておりますので」


「ふー、……なら、覚醒の真の目的は?

 首謀者は誰?」


「さあ……」


「炎竜を使って、この世界を破滅に追い込むのでしょう?」


「まあ、恐ろしい……」


「依頼したのは魔王?」


「それは、守秘義務を負っておりますので、お答えできませんわ」


「なぜ、本当のことを言えないの?」


「それより、これからどうするのかしら?

 わたくしを捕まえるのでしょうか?」


「当然。まずは、その一般人を解放しなさい」


「それはできません。

 大事な人質ですから」


「解放しなさい!」


「その要求を呑む代わりに、この女性に今すぐ自殺するように暗示をかけますけれど、よろしくて?」


「な……っ!」


「時間もないので、5秒で判断してくださらない?

 5……4……3……」


「なんたる卑怯!」


「2……1……」


「結界を解除します!」


「よい判断ですわ。

 では、ごきげんよう」


 マイコは、歯ぎしりをしながら、右腕を真横に上げた。



 瞬時に晴れる緑の霧。


 一斉に動き出す人々。


 耳に飛び込む会話や靴音。



 とその時、女性スタッフは、急に白目になって、崩れるように倒れ込んだ。


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