表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会
53/188

53.準々決勝 第二試合

 カナがグラウンドへ飛び出すと同時に、反対側のダグアウトから人が飛び出した。


 遠い位置にいるが、次の対戦相手が銀髪のショートヘアと緑色のミニスカートであることから、誰だかわかる。


 マリアンヌ・ロパルツである。



 ぴったり息の合った登場に、カナは吹き出しそうになる。



(何これ、ウケるー。

 鏡を見ているみたい。

 ……でも、タイミングがあまりに良すぎる。

 もしかして、出てくるのを待ち構えていたのかしら?)



 そう思ったカナは、足を止めて警戒した。


 マリアンヌも、足を止めた。



 その頃、スタジアム内は、多数動員された警備員たちの活躍により、乱闘騒ぎが収束に向かっていた。


 大部分の観客は、そちらに気を取られていて、二人の登場に気づいたのは、スクリーンに彼女たちの顔が映ったときだった。



 遅ればせながら巻き起こるカナコール。


 マリアンヌへの声援は完全にかき消され、客席の片隅に追いやられたマリアンヌ応援団の旗が、包み込む敵の声援に抵抗するかのごとく力強く翻る。



 カナは、そんな自分への大応援よりも、マリアンヌの前傾姿勢が気になって仕方ない。


 明らかにスタートダッシュの構え。


 しかも、体の正面が、グラウンドの中央ではなく、自分の方を向いている。



(あれはどう見えても、獲物に飛びかかろうとしている獣みたい。

 客席に目を向ける隙を狙って、何か仕掛けるかも知れないわ)



 直感が働いた彼女は、直ぐさま強化魔法を発動する。



 それが合図であったかのように、マリアンヌの足下の地面が光り輝く。


 あれは、魔方陣だ。



 半身の体勢に構えるカナ。


 突進を開始したマリアンヌ。



 彼女は、サッカーコートを2秒以下で横切った。


 人間の足とは思えない、この速さ。


 魔法のなせる技だ。



 金属の義足が、鋼色の光の軌跡を描く。


 その足の動きに目が離せなくなったカナは、マリアンヌの体当たりの意図に気づくのが遅れた。



 我に返って右側に跳んだ時は、すでに遅し。


 軌道修正したマリアンヌは、右肩を前に向け、体を斜めにして跳ぶ。


 彼女の体当たりをまともに受けたカナは、後方のフェンスに激突した。



 フェンスに沿って滑りながら、地面に尻餅をつく。


 体が軽々と持ち上げられる。


 頭からダグアウトの中に放り込まれる。


 一番前のベンチに、頭から叩きつけられる。



 試合は、まだ開始されていない。


 なのに、なぜこんなことをされるのか。


 こみ上げる怒り。


 だが、それは、気絶しそうなほどの激痛と目眩(めまい)でかき消された。



 転げ落ちるカナに入れ替わり、マリアンヌの義足によるドロップキックがベンチを直撃する。


 木製のベンチは、バキッと大きな音を立てて、真っ二つに折れた。



 近くで見る鋼鉄の義足は、ロボットの足みたいな物ではない。


 大腿骨、膝蓋骨、脛骨、腓骨を一回り大きくしたような、足と言うよりは骨格。


 照明の光を受けて、鋼鉄の骨が不気味に輝く。


 これは、もはや凶器。



 折れたベンチから義足を抜いたマリアンヌは、床に転がったカナの横顔を、抜いた義足で踏みつける。


 とその時、ダグアウトの中で大声が響き渡った。



「アレットゥ(やめなさい)!」



 背中を叩くフランク王国の言葉に、マリアンヌは頭だけ振り返る。


 彼女の視線の先には、右手を突き出したイズミが、両足を開いて構える。


 手の先には、輝く魔方陣がゆっくりと回転する。



「――ラフェルム(黙れ)」



 低い声で冷たく言い放つマリアンヌ。


 琥珀色の目がギラギラと光り、面長の顔が、たちまち怒りに満ちてくる。


 歯をむいた彼女の右手の先に魔方陣が出現し、ボウッと火の玉が浮かんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
cont_access.php?citi_cont_id=62234447&si
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ