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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会
5/188

5.試練の初戦

「あら? どうかしたの?」



 カナは、頭の上からミナに声をかけられて、自分がいつの間にかうつむいていたことに気づいて、ビクッとした。


 唇を真横に引っ張り、急ごしらえの笑顔を作ってから顔を上げ、目を細める。



「珍しいわね、思い出し笑いなんて」


「お姉様方やイリアに応援してもらって、嬉しくて……」


「ふーん」



 ニヤッとするミナを見て、カナは作り笑いの表情のまま固まった。


 嬉しいのは嘘ではないが、後付けの理由を口にして作り笑いを見せていることは、ビクッとした自分をミナの側に立って見つめれば明らかだ。



「自分だけが孤独ではないのよ。相手も孤独。しかも、強いあなたと当たる相手は、不安でいっぱい」



 ミナが、自分を傷つけないように遠回しに言ってくれているのが、痛いほどわかる。


 カナの目が潤み始めた。これで、嘘はバレた、と思った。



「カナに勝てるのは、カナしかいないの。あなたはそれだけ強いのよ。忘れないでね」



 そう言うと、ミナはカナの頭を優しく抱きしめた。


 長姉の双丘の谷間に顔を埋め、その柔らかい感触を感じつつ、服を涙で濡らすカナは、このまま自分の不安も吸い取って欲しいと思った。



 自分に勝てるのは自分しかいないことは、何度も聞かされている。


 でも、自分の不安は、まだ自分では拭えない。


 なので、いつもこうやって、優しい姉に頼ってしまう。



 そんな弱い自分が嫌いだ。


 今度こそ、決別しよう。


 弱気になって負けた自分の姿など、見たくもない。


 この選手権を機会に、強くなろう。



 不安を微塵も感じない、強靱な心を持つのだ。


 その精神力さえあれば、最大限の力を発揮できるのだから。



 今度は、いける!


 今度こそ、できる!!



 そう思うと、澄んだ空気を胸いっぱい吸ったように感じてきた。


 ふと見上げた先には、ミナの優しい笑顔が輝いていた。



「よかった。吹っ切れたようね」


「ありがとうございます、ミナお姉様。勝てる気がしてきました」


「それでこそ、カナよ。強いカナ、はっけーん」



 マコトもイリヤも笑った。



「さあ、急ごう。僕が呼んでおいた迎えの車も来ているはず」


「はい、マコトお姉様」


「カナお姉様! イリヤが荷物を持ちます!」



 部屋を出て行くカナとイリヤを見送ったミナは、マコトと顔を見合わせた。



「姉さん。カナは、まだまだ手が掛かりますね」


「ええ、そうね。でも、今ので成長したと思うわよ。……それより、マコト。カナの対戦相手、わかる?」


「トーナメント表なら、ここにありますが」


「どれどれ、……うーん」


「どうかしました?」


「もう少し、LOVEを注入しておけば良かったかしら」


「え?」


「心が折れないといいけれど……」


「心が折れる? その相手は誰ですか?」


「初戦に当たる子よ」


「……プロフィールを見ても、過去の対戦データを見ても、そんなに強い相手とは――」


「二回戦も三回戦も、苦戦する可能性はあるわね」


「……姉さん、お言葉ですが、そうは見えませんが。カナなら一撃で――」


「あらあら。見る目のないマコト、はっけーん」


「はいはい……」


「魔力や腕力があれば勝てるとは限らないわよ。とにかく、カナにとっては、毎回試練ね。それは、避けて通れない道――」



 ミナは、マコトの不思議そうな顔から視線を切って、静かに部屋を出て行った。


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