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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会
49/188

49.煉獄

 直径1メートルの火柱が、今度は無様な格好で倒れているユカリの体に沿って広がり始めた。



「うわっち! わっっち! っっっっっち!

 や、や、やめろおおおおおおおおおおっ!!」


 暴慢な態度以外見せたことがないユカリが、恐怖におののいた顔で助けを求める。


 だが、イズミは能面のように無表情の顔をユカリに見せるだけ。


「て、てめー!!

 これ以上やったら、本気で殺す!!」


「ついに本性を現したわね。

 じゃあ、させないように、思い知らせてあげる」


「待て待て待て!!

 こ、これは、言葉のあれ(ヽヽ)


(あや)


「殺すのなし、なし!」


「どうだか。

 魔法で暴力を振るう人、私、許せないので」


「な、何をする!!」


「その心を、こうして、浄化してあげるわ。

 ――煉獄(プルガトリオ)!」


 イズミは、さらに両腕に力を込めた。


 すると、たちまち炎がユカリを包み込む。


「――――!!」


 火だるまになり、のた打ち回るユカリ。


 彼女の絶叫は、火炎の唸りにかき消される。


「――――!! ――――!!」


 残酷な炎から逃れようと、四つん這いになり、蹌踉めきながら立ち上がる。


 だが、猛火は、彼女にまとわりついて離れない。


「――――!! ――――!! ――――!!」


 呼吸で肺の中も焼かれるのか、喉をかきむしる。


 震える手が虚空をつかむ。



 だが、その動作も、徐々に緩慢になっていく。


 そしてついに、糸の切れたマリオネットのように崩れ落ち、顔面から倒れ込んだ。



「そこまで!」



 審判員マイコの右手が挙がった。


 イズミは、直ちに魔方陣ごと炎を消し去る。


 ユカリを包んでいた猛火も、同時に消えた。 



 もちろん、試合なので、イズミは炎を加減している。


 相手に熱によるショックを与える程度で、焼け焦げる手前で止めているのだ。


 それでもユカリの肌は、真夏の炎天下で日焼けになったかのように、真っ赤に腫れ上がった。


 彼女は芝生に顔を伏せたまま、死んだように動かない。


 マイコの10(テン)カウントが、シーンと静まり返った会場に響き渡る。



(ナイン)……、10(テン)……!

 勝者、五潘(ごはん)イズミ!」



 その瞬間、スタジアムでは歓声と怒号が轟いた。


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