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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会
48/188

48.地獄の大火

「させるかあああああぁ!!」



 ユカリは、尻餅をついた体勢から素速く体を起こし、中腰の体勢に変えて、両腕を斜め上に突き出した。


 たちまち、彼女の正面に薄緑色のガラスのような壁が出現する。


 魔法攻撃の防御用のバリアだ。



 バリアは、ひとりでに湾曲し、伏せたお椀のような形に変形して、彼女を包み込む。


 その完了と同時に、イズミの魔方陣の行列が、バリアすれすれまで到達した。



「へん! お生憎様!

 一歩遅かったな!

 この魔法無効化障壁ディフェンシブ・ウォールの前に、そんな魔方陣の束を突きつけても、ビクともしないぜ!」


「あら、そんなこと、どうして決めつけられるのかしら?」


「たりめーだろうが!」


「これでも?」



 とその時、イズミとユカリとの間にある、二十枚以上の魔方陣が、白くキラキラと輝きながら、ゆっくりと回転を始めた。


 幾何学模様と古代文字が複雑に組み合わされた魔方陣たちは、空中に光の軌跡を描き、実に幻想的な光景を見せる。



「な、何をする!?」


「これで終わりね。

 ――地獄の猛火フォーコ・インフェルナーレ



 イズミが略式の詠唱をすると、突き出した両腕の先から、炎が勢いよく噴射された。


 その炎は、魔方陣の中心を通過する度に増幅されながら、1秒で標的(ターゲット)へ迫る。


 終端の魔方陣に到達した時には、魔方陣の直径に等しい太さの火柱になっていた。



 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!



 猛火が唸り声を上げ、バリヤの前面に激しく衝突する。


 あまりの衝撃に、バリアが震え始めた。


 ユカリの突き出す両腕もブルブルと震える。



「ぬおおおおおっ!!」



 イズミは、ちょっと腕に力を入れる。


 それだけでさらに激しさを増した炎は、バリアのお椀の形に沿って包み込む。


 地獄の猛火は、勢いが衰える様子など全くない。



「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」



 ピシッ……ピシッ……ピシッ……



 バリアに亀裂が入ってきた。



「……ば、馬鹿な!!

 …………ぐあああああっ!!」



 ついに、バリアが粉々に砕け散る。


 立ち塞がる物を無慈悲に打ち砕いた火柱は、獲物に飛びつく猛獣のように、ユカリをなぎ倒した。


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