43.想定通りの組み合わせ
放送を聞き終えたカナとイズミは、顔を見合わせて吹き出した。
やはり、八人の選手をランダムに組み合わせたとは思えない。
予想通りの、仕組まれたような組み合わせだったのだ。
「第一試合、七身ユカリ対五潘イズミ、
第二試合、マリアンヌ・ロパルツ対蜂乗カナ、
……」
イズミは、頬杖を突いて不機嫌そうな顔をカナへ向ける。
「私も嘗められたものね。
ユカリが勝つと思って組み合わせたのよ、きっと。
いかさまの抽選で」
「昨年、イズミが年齢制限で出場できなかったから、実力が未知数なので組ませたと思うわ」
「魔法少女は、年齢じゃないわよ。
あなたもわかるでしょう?
年功序列なんかで決まらない。
魔法で決まるのよ。
大会本部は、ぼんくらの魔女の集まりかしら」
「さあ……」
「まあ、あなたは母親が関係者だから、言いにくいのもあるでしょうけれど……」
「ええ、まあ……」
「今に見てなさい!
私が、ユカリをこの手で沈めるから!」
イズミは、頬杖を突いていた手を上げて、拳をギュッと握りしめた。
「変態デブが準々決勝敗退で、この大会もしらけるわね。
でも、私のせいじゃないわよ。
責任は、大会本部にあるんだから」
◇◆◇■□■◇◆◇
一方、蜂乗家の貴賓席では、組み合わせ発表の後、マコトが頭を抱えていた。
「あらあら、頭痛が痛いマコト、はっけーん」
「姉さん。頭痛という時点で痛いのですから、言葉が被っています」
「マコトお姉様、どうされたのですか?」
「イリヤ。カナの相手が悪すぎるからさ」
「まさか!? カナお姉様が負けてしまうのですか!?」
「それは、そっけいだよ」
「そっけいって、何ですの?」
「あらあら。早計が読めないマコト、はっけーん」
「ハハハ! 失礼!
姉さん。これで、おあいこですね。
イリヤ、訂正。早計の間違い。
早とちりということさ」
「なら、カナお姉様は大丈夫なのですね!?」
「多分、大丈夫。……と思いたい。
何せ、相手は時間を操る魔法を使う――」
「時間を!? 止めるのですか!?」
「マリアンヌ・ロパルツの場合、止まる、戻す、進めるが自由自在さ。
ところが、それだけじゃない」
「他に何か?」
「彼女には、やっかいな使い魔がいるのさ」
「使い魔なら、カナお姉様にはリンが付いていますわ!」
「でもね、イリヤ。
リンが勝っても、カナのためにはならないのだよ」
「わかっています、マコトお姉様。
勝っても、それはカナお姉様の実力ではないことを。
でも、相手が使い魔を出してくるのに、こちらからは出してはいけないのですか?」
「それは……」
「魔物相手に生身で戦えとおっしゃるのですか!?」
「それもそうだね」
「使い魔の力で勝っても、勝ちは勝ちです。
それがカナお姉様の実力でもあるのです。
総合力です」
「イリヤには参ったなぁ」
「あらあら、珍しく白旗を掲げるマコト、はっけーん。
でもね、イリヤ?」
「はい、ミナお姉様」
「私もマコトも、カナが成長することを願っているの。
イリヤのやり方だと、勝ちは勝ちでも、カナはそれ以上成長しないのよ」
「それもわかっています!
なら、こうしてください!
もし、カナお姉様が何もしないでリンだけに試合をやらせていたら、叱ってください!
そうではなくて、ちゃんと戦って、リンをうまく使って勝ったら、褒めてあげてください!
うまく使った時に、です!」
「……それもそうね。
約束しましょう」
「……ですね、姉さん。
イリヤも、自分の意見をキチンと言えるようになったね」
「ありがとうございます、お姉様方!」
イリヤの艶々した顔が、笑みで一杯になった。
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