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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会
39/188

39.殺人の嫌疑

 偽のマイコは、後転しながら遠ざかり、最後はうつ伏せになって動かなくなった。


 すると、術が解けて、森が煙のように消えていく。


 猟銃も消え失せた。



 代わりに、芝や観客席が見えてきた。


 ところが、ミヤビがいない。


 審判員もいない。



 観客席の様子もおかしい。


 ザワザワする声で、スタジアムが埋め尽くされているのだ。



 不穏な空気が漂っている。


 冷たい視線を全身に浴びているようにも感じる。


 カナは、不安に満ちた顔を辺りへ向けた。



 すると、ダグアウトからイズミが走り寄ってくるのが見えた。


 険しい顔をしている。


 カナは、今の状況を考えて、攻撃をやり過ぎたのではないか、と思い始めた。



 イズミは、カナを睨み付けつつ、倒れている偽のマイコのそばにしゃがみ込んだ。


 そして、右手を左肩にかけると、ヒョイと上へ持ち上げる。


 横たわった体は、いとも簡単に、うつ伏せの状態から仰向けになった。



 カナは、息を飲んだ。


 現れたのは、黒いローブと同じ色の炭化した顔。


 偽のマイコは、黒焦げの焼死体になっていたのだ。



 イズミは、右手で体を左右に揺する。


 まるで、棒きれでも扱うようなぞんざいな扱い。


 検分を終えた彼女は、ため息をついて立ち上がった。



「あなた、その雷撃魔法って、人を殺せるのね」


「そ、そんなことないわ。

 わ、私、弱い攻撃を出すために右手を使うの。

 左手を使って、最大出力にすれば、そのようになる可能性はあるけど――」


「言い訳無用。現に、こうやって審判員を殺したじゃない」


「し、審判員!?

 おかしいわ!

 これは、ミヤビさんの策略よ!」


「見損なったわ! 人殺し!」


 イズミは、両手をメガホンの形にして、観客に向かって叫ぶ。


「みなさーん!! 誰か、助けてー!! 人殺しよー!!」


 すると、無数の客がグラウンドに飛び降りて、一斉にカナの方へ走ってくる。


「イズミ! 何をするの! やめて!」


「イズミですって? なぜ、あなたが私を呼び捨てにするの?」


「えっ?」


「生意気な人。

 私を呼び捨てにしていいのは、ミヤビだけよ」


「ええっ!?」


「いつ、どこで、何年何月何日何曜日、何時何分何秒何マイクロ秒に、私を呼び捨てにしていい、って言ったの?

 言うわけないじゃない」


「嘘よ!」


「言うわけない!」


「絶対、嘘!!」


「言うわけない!!」


「絶対、絶対、嘘!!!」


「ゆーわけにゃい!!!」


「は?」


「あ……」



 カナは、ニヤッと笑った。


 イズミも、つられてニヤッとする。



 その間、無数の観客が怒鳴りながら、地響きを立てて迫ってきた。


 もうあと10メートル。



 この時、カナは、もう一つの証拠をつかんだ。


 結界を越えることが出来ない一般人が、もう間近に迫っている。


 これは、あり得ない。



 カナは、偽のイズミに向かって、素速く左腕を突き出し、右手を左肘に添える。


 いつもの右腕ではない。


 強めの雷撃魔法が出せる左腕だ。



「――稲妻(ライトニング)!!」



 偽のイズミは両腕を前に突き出し、瞬時に、体の前で輝く魔方陣を展開する。


 だが、カナが発射した横向きの大きめの稲妻が、その魔方陣を粉々に砕いた。



「ふぎゃあああああ!!!」



 すっかりミヤビの声に戻っている偽のイズミは、後ろに飛ばされて、尻餅をついた。


 と突然、迫る観客もスタジアムまでも、たちまちにフェードアウトしていく。



 辺りは、漆黒の闇になった。


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