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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会
35/188

35.余裕綽々な対戦相手

 ミヤビは、なおもカナへ射貫くような視線を向けている。


 だが、カナも負けてはいない。


 彼女は視線をそらさなかった。


 すると、ミヤビは「疲れたにゃ」と視線を切って、再び頭を横にして目を閉じた。



 それから試合開始のファンファーレが鳴っても、彼女は起きなかった。


 カナは眠り猫のことなど横に置いて、これから始まるイズミの試合に、声援を送る。



 第一試合は、イズミとヤマト国の選手の試合で、イズミは手堅く勝ちを収めた。


 誰が見ても楽勝である。


 カナの周囲にいる選手は、口々に『イズミの手抜き』と言う。


 確かに、カナの目にも、魔力を半分も使っていないように見えた。



 第二試合は、ユカリとスヴェリエ王国の選手の試合で、当然のことながらユカリの圧勝。


 彼女の場合、魔法は暴力行為に等しい。


 相手の選手は魔法を繰り出すための詠唱の時間を与えられず、爆裂魔法の直撃でボロボロになり、崩れるように倒れた。



 これは試合ではない。


 あんな危険な魔法を、至近距離で使用すると、一歩間違えれば相手を殺してしまう。


 ユカリの高笑いに、カナは怒りで体が震えた。



 第三試合は、ウェールズ王国とフランク王国の魔法少女の試合だが、カナはさほど関心はなかった。


 むしろ、ずっと眠ったままのミヤビが気になってしょうがない。


 こうも騒々しい中で、よく眠れるものだ。


 時々、ビクンとするが、実際は完全に夢の中だろう。



 いよいよ、昼休憩前の最後の試合、第四試合の開始である。


 カナ対ミヤビ。


 第三試合がまばらな拍手で終わったのに対し、待っていましたとばかり、スタジアムが異様な盛り上がりを見せる。



「ミ・ヤ・ビ!! ミ・ヤ・ビ!! ミ・ヤ・ビ!! ミ・ヤ・ビ!!」


「カ・ア・ナ!! カ・ア・ナ!! カ・ア・ナ!! カ・ア・ナ!!」



 カナは、自分の両頬を両手でパンパンと叩いて、気合いを入れる。


 だが、ミヤビの方は、ベンチの上で寝転がったままだ。


 こちらが恥ずかしくなるほど、スカートの中を見せている。


 カナが起こそうと立ち上がると、先にイズミが駆け寄ってミヤビの体を揺すった。



「ミヤビさん! 試合が始まりますよ!」


「ふにゃ?」


 ミヤビは、片目を半分開けた。


「ほら、起きて!」


「ふにゃにゃ!?」


 今度は、両目を半分開けた。


「さあ、急いで!」


「そんにゃに急いで、どこへ行くにゃん?」


 ミヤビは天井を向いて、口の上で右手を上下させて「ふわわわぁ」を大あくびをする。


 ふざけているのかと、カナは少しイラッとした。


「どこって、グラウンドです!」


「イズミちゃんは、怖いお母さんみたいにゃ。

 仕方ないにゃあ……。

 よっこらしょうぶはミヤビのかちー」



 ようやく、ミヤビが起き上がった。


 カナは、彼女の言葉にムッとする。


 とその時、ミヤビと視線が合って、急に足がすくんだ。



 先ほどとは違う、強烈な視線。


 ジッと見つめていると、瞳孔の中に体が吸い込まれそう。


 蛇に睨まれた蛙もこうなのだろうか。



「ふふん。簡単に幻影魔法がかかる素人の目をしているにゃ。

 もし発狂したら、かわいそうにゃ。

 安心しにゃ、幻影魔法は使わにゃいから」



 そう言うとミヤビは立ち上がり、つかつかとカナの方へ歩み寄ってきた。


 背丈は、カナより頭一つ分低い。


 その彼女が、右手の人差し指をビシッとカナの鼻先へ向ける。



「覚悟はいいかにゃ?

 グラウンドで、ちびらないかにゃ?

 にゃんこパンチだけで、沈めてあ・げ・る・にゃん♪」


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