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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会
34/188

34.第二回戦

 ホテルに戻ったカナは、イリヤの祝福を全身で受け止めた。


 飛びつかれ、抱きしめられ、頬にキスされと、派手な祝福ぶりだ。


 彼女にしてみると、いつものイリヤなのでそれほど驚かないが、やはりキスをされると首筋がむずがゆい。



 一方、マコトからは冷静な分析に基づくアドバイスを受け、ミナからは優しいフォローを受けた。


 昨日までの彼女なら、姉たちの言葉のオブラートをはがして、厳しい忠告としてビクビクしながら受け止めていたであろう。


 だが、今は素直に受け止めて、自分の糧にしようと努めていた。


 ミナは、そのようなカナの心境の変化を感じ取り、やはり試合に参加させてよかったと満足そうに頷いていた。



「カナ。そういえば、また取り組みが抽選になるの、知ってる?」


「姉さん、それ本当ですか!?」


「あら、なんで、マコトが返事するの?」


「いえ……」


「ミナお姉様。帰り際に、スタッフさんから聞きました」


「それで、カナお姉様がアンドロイドに捕まっていたのですね」


「なんでも、ヤマト国の魔法少女同士の取り組みを増やして、残る人数を半分にしたいんですって」


「姉さん。抽選なら、逆にヤマト国が有利になりはしませんか? 全員がバラバラになれば――」


「それがね。噂なのだけれど、操作された抽選らしいの。だから半分になるの」


「ひどいなぁ! ……でも、その情報源、どこですか?」


「うふふ、おしえなーい」


「姉さん! 言っておきながら、ずるいです!」


「イリヤもそう思います!」



 カナは、なんとなく、情報源が母親のような気がしていた。


 かねてから、七身家(ななみけ)主催の本大会に対して「営利目的」と批判的だったマイコは、ヤマト国の体面から渋々参加を表明した経緯がある。



 なので、裏の情報をこっそりミナに流している可能性は否定できない。


 なお、ミナの使い魔である白フクロウのハカセが、大会委員会の部屋に潜入して聞き耳を立てていた可能性もある。


 しかし、屈指の魔女たち相手に、それを成し遂げるのは至難の業だ。



 翌日、またカナたちは、自動運転車でスタジアムまで乗り付け、記者に取り囲まれる。


 でも、一度経験しているので、交わすのは容易だった。



 入場の際にアンドロイドから受ける検査は、昨日と全く同じで、手順まで完璧に覚えられた。


 ドキドキしながら入る更衣室は、誰もいなかった。


 カナは、ホッとしつつも、急いで着替えてダグアウトへと走る。



 廊下まで聞こえてくる観客の声援まで、昨日と一緒だ。


 声援を浴びると、不思議と力が漲る。


 観客まで味方につければ、怖いものなしだ。



 ダグアウトに到着すると、首を長くしていたイズミが笑顔で手を振る。


 いつもの真剣な顔ではないので、カナはちょっと拍子抜けした。



「ねえ。あなたの対戦相手が決まったわよ」


「誰?」


「そこに寝ている子」


「えっ?」



 イズミが指さす先に、ベンチの上で丸くなって寝転がる少女がいた。


 丸顔で緑髪のショートヘア。よく見ると、猫耳のヘアバンドをしている。


 セーラー服は、青色の襟と青色のミニスカート姿。


 寝転がってカナの方へ尻を向けているので、スカートの中が丸見えだ。



四石(しこく)ミヤビさーん。

 あなたのお相手の蜂乗(はちじょう)カナさんが来たわよ」


「ふにゃ?」



 少女は、名前を呼ばれてちょっとだけ顔を上げた。


 返事は腑抜(ふぬ)けているが、カッと見開いた碧眼の視線がカナを射貫く。


 それは、カナの肝を冷やすのに十分だった。



四石(しこく)ミヤビさん。よ、よろしくお願いします」


「ふーん。手加減して欲しいかにゃ?」


「え?」


「耳が遠いのかにゃ?

 手加減して欲しいかと聞いてるにゃ」


「いいえ」


「ふん。大きく出たにゃ。

 昨日の基本的にゃ幻影魔法も交わせにゃい素人が、よー言ったにゃ。

 そんにゃ相手は、にゃんこパンチで十分にゃ」


 その時、イズミがカナの耳元で囁いた。


「ミヤビさんの十八番(おはこ)は、幻影魔法よ。

 おそらく、今回の出場選手の中で、ピカイチかも」


 カナは、自分の血の気がサーッと音を立てて引いていくのを感じていた。


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