3.出陣前
10月10日。
晴れ渡る空に、昼花火が盛んに打ち上がる。
少し古風な開幕の合図であるが、響き渡る爆音が人々の耳朶を叩き、期待が否が応でも高まっていく。
都会のビルのあちこちに設置された大型モニターが、第二回魔法少女世界選手権大会開幕まで後4時間と報じている。
携帯端末にも、詳細情報が配信される。
テレビ局では特番が放送されていて、解説者が熱弁を振るう。
三十二人の魔法少女たちは、会場近くの八つのホテルに四人ずつ別れて宿泊している。
その一つの815号室に、蜂乗家の四姉妹が集まっていた。
ダブルベッドの上に腰を下ろす彼女は、蜂乗カナ。中学一年生。13歳。
150センチメートルの細身の体を包むのは、白のセーラー服、コバルト色の襟、リボン、プリーツの多いミニスカート。
選手権出場用の制服だ。
西洋人ほどではないが高い鼻のおかげで、ハーフっぽい、アイドルのような美少女。
しかし、今は、出演中のアイドルみたいな笑顔ではない。
深紅のロングヘアの毛先を白い指に絡めて、落ち着かなそう。
「マコトお姉様。本当にカナが蜂乗家の代表でよかったのでしょうか?」
桜色の唇から漏れる言葉は、力ない。
翡翠色の双眸が、床の茶色い絨毯の模様を追う。
「カナ。昨年の僕のリベンジに気を遣ってくれているのかい? それは無駄というものさ」
僕と言っているが、男装の麗人と呼ばれる、黒髪でベリーショートカットの女の子。
彼女は、蜂乗マコト。高校一年生。16歳。
190センチメートルの長身が腰を屈め、優しい碧眼でカナを覗き込む。
そして、カナの右横にピタリと寄りそうように座った。
並んでいる二人を見ると、どう見ても兄と妹だ。
「でも、決勝戦で七身ユカリさんともう一度――」
「この選手権は、個人戦の様相を呈しているけれど、七身家は魔女の一族のランク付けを狙っているのだよ。
だから、これは蜂乗家の戦い。
カナは僕より実力があるのだから、代表は当然さ」
「いいえ、それは買い被りです」
「ここにいる四人の中で、七身ユカリに正面から挑んで勝てるのは、カナだけだよ。
僕が言うのだから、自信を持って」
「あの時、ユカリさんが、だまし討ちさえしていなければ。だから、リベンジを――」
「それは言わない約束だったよね。
あの選手権は、何をやっても良いルール。
町中で悪い『はぐれ魔女』と戦うときは、ルールなんかないから。
勝負はね、実戦と同じ。全ては、倒れたら負けなのだよ」
そう言うと、マコトはカナの左肩を左手でつかみ、グイッと引き寄せる。
とその時、カナの右頬に、マコトの左胸が押しつけられた。
突き出た胸の、張りのある弾力にドキッとするカナ。
だが、服を通して伝わる体温の温かみに、少しずつ緊張がほぐれていく。
ここに、小さな女の子が飛び込んだ。