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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会
22/188

22.鎖と剣

 足を大きく広げたナディアが、右手をグンと高く上げる。


 五本の指が、頭上で何かを握るように、筒状に曲げられた。


 すると、その筒の中から、光の粒が集まった物が現れて、長く伸びていく。



「フン。ロングソードかよ」



 ユカリの言葉に、ナディアはニヤリとする。


 密集を始めた光は、フォルシオンに似た、幅の広い太刀になった。


 鏡面のような刀身が、息を飲む聴衆の姿を映し、照明を反射して光輝く。


 それを一瞥して肩をすくめるユカリは、ため息をついた。



「去年の決勝戦で、剣をブンブン振り回して負けた蜂乗(はちじょう)マコトとかいう能なしがいたが、そいつの真似かい。

 縁起でもない。やめときな」


 そう漏らす彼女の顔へ、ナディアが太刀の切っ先をビシッと向けた。


「やめときなって、言ってんのに。馬鹿か、お前。

 ……仕方ねーな。

 なら、剣で勝負、と行きたいところだが――」



 短く詠唱したユカリが、空中から黒光りする太い鎖を出現させて、両手でがっしりとつかむ。


 両端が、芝生の上にジャラリと重い音を立て、渦巻き状に丸くなった。


 口角をつり上げる彼女は、顔の前でたわむ鎖を、真一文字に引っ張る。



「今年は、この鎖で行こうか。

 観客(ギャラリー)に、おんなじ戦いを見せたとなると、金返せ、と言われるからな」



 とその時、ナディアが猛ダッシュを開始。


 途中から地面を蹴って、太刀を大きく振りかぶった彼女は、低めの放物線を描きながら跳躍する。


 10メートル以上の間合いを一気に詰めて、力強く剣を振り下ろした。



 ユカリの頭上で冷たく光る刃。


 空気を切り裂く音が迫る。


 だが、一歩も動かないユカリは、ピンと張った鎖を持ち上げただけ。



 キイイイイイン!!



 甲高い悲鳴のような金属音。


 剣と鎖との摩擦で飛び散る火花。


 剣士の頭上へ弾き返される太刀。



 間髪入れず、右上から袈裟懸けに太刀が振り下ろされる。


 だが、黒い剣が真横になったような鎖は、ビクともしない。


 返す刃は、左上から袈裟懸けに。


 これも鎖が受け止める。



 目をむくナディア。


 嗤うユカリ。



 目にもとまらぬ速さの剣が、横向きの8の字の銀閃を描く。


 黒い鎖の中心で、火花が散る。


 美しい剣戟の展開に、観客(ギャラリー)は息を飲む。



 意表を突いて、右から左へ真横に太刀が襲う。


 だが、瞬時に縦方向に向けられた鎖が、難なく防ぐ。


 筋肉の動きと眼球の動きが、完全に読まれているようだ。



 今度は、つばぜり合いに持ち込んだナディア。


 体重を乗せて、太刀で鎖をグイグイと押す。


 彼女の顔が、みるみる赤鬼のようになる。



 だが、先ほどからユカリは、一歩も動いていない。


 剣を振り回すやんちゃ(ヽヽヽヽ)な幼子相手に、全力を出せるかとでも言いたそう。


 笑いを堪えていた彼女が、ついに吹き出す。



「ばーか! がら空きだぜ! この、ど素人が!」



 ユカリの右足が、ナディアのみぞおちを狙う。


 瞬時に展開された輝く魔方陣が、腹の前に出現。


 続いて、靴底で強く深く蹴り込む。



 丸太で腹をど突いたような鈍い音。


 短い呻き声を上げたナディアは、体をくの字に曲げた。


 その体勢で地面と平行に、万有引力の法則に逆らつつ、後ろへ飛ばされる。


 そして、太刀を出現させた位置を遙かに超え、結界の壁に激突した。


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