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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会
19/188

19.貴賓席

 魔法少女世界選手権大会会場となったスタジアムには、貴賓席としてのプライベートルームが八つあった。


 各部屋は豪華な内装で、ソファとその横に置かれた小さなテーブルの組が、最大で十組設置可能。


 それらが横一列に並べられ、そこに座れば、全面ガラス張りの窓越しにグラウンドを見下ろせる。



 ソフトドリンクもアルコールも、食事までも無料で提供される。


 十人が囲める丸テーブルも置けるので、昼食などはそこで取ることが可能だ。


 なお、人数に応じてソファの数も、丸テーブルの大きさも事前に変更できる。


 こんな贅沢な貴賓席だが、すべてヤマト国の八つの家族に占有されていた。



 ヤマト国には、九つの魔女の家系がある。

 壱番矢家(いちばんやけ)

 二一宮家(にいみやけ)

 三奈田家(さなだけ)

 四石家(しこくけ)

 五潘家(ごはんけ)

 六隠家(ろくなばりけ)

 七身家(ななみけ)

 蜂乗家(はちじょうけ)、そして、

 九家(じゅうまえけ)


 このうち、九家(じゅうまえけ)は、一族のうち五人の魔女が禁忌の魔法を使用したため謹慎中で、もちろん、七身家(ななみけ)からは出場依頼の声が掛からなかった。


 海外の魔法少女を優先するため、壱番矢家(いちばんやけ)から蜂乗家(はちじょうけ)まで、一人ずつ八人の代表選手が出場したのは第一回大会も同じ。


 貴賓席を、独占したのも前回同様だ。



 蜂乗家(はちじょうけ)は父親がいなくて、母親は審判員なので、割り当てられた貴賓席にはミナ、マコト、イリヤと、それぞれに専属のメイドである三人の合計六人のみが入っていた。


 部屋が広すぎて、六人でもがらんとした感じ。


 ソファと小型テーブルは、ゆったりした配置で三組並んでいる。


 メイドたちは、それぞれ主人のソファの後方に離れて立つ。



「あらあら。心配性の親みたいなマコト、はっけーん」


「姉さん。これが落ち着いて見ていられますか? あああっ! 心配だ!」


「マコトお姉様。そんなに腰を上げたり、前のめりになったり。

 もう少し、落ち着いてご覧になってはいかがですか?」


「あらあら。今度は、歩き回るクマさん、はっけーん」


「あー、見ていられない!」


「マコトお姉様。お座りになってはいかがですか? 

 カナお姉様の出番は2回目ですから、まだ時間がありますわ」


「そうそう、忘れないうちに言っておかないと。

 ここからマコトは、テレパシーで指示をしては駄目よ。使い魔の伝令でも、カナが失格になるから」


「それはわかっています!

 でも、対戦相手を直前で変更するなんて、あり得ない!

 せっかくのアドバイスが、全部無駄になったんです!」


「マコトお姉様。カナお姉様のお力を信じましょう!

 データがない対戦相手でも、初対面のこわーい相手でも、必ず勝利する、とイリヤは信じています!」


「ここでいくら気を揉んでも、胃が痛くなっても、グラウンドで戦うのは、マコトではなく、カナなのよ」


「姉さん、わかっています。

 なぜ今回、僕ではなく、カナを選んだのかもわかります。

 だから勝たせたいのです」


「ううん、マコトはわかっていないわ。

 マコトが勝たせるのではないのよ。

 カナが自分に打ち勝つの。

 それが今回の目的」


「それも、……わかるのですが」



 マコトは、ソファで腰を弾ませ、背もたれに背中をぶつけ、天を仰ぐ。


 そして、右頬を、次に左頬を手で押さえる。


 昨年、決勝戦で負けた直後に、母親マイコから受けた八発の平手打ちの痛みが脳裏を駆け巡る。



 あの屈辱を、妹に味わわせる訳にはいかない。


 自分は、絶望の淵から這い上がることが出来た。


 でも、妹は出来ないはずだ。



 出来ない、……はず。


 でも、それは本当か?



 そうだ。だから、守ってやるのだ!


 でも、それは、本当に妹のためになるのか?



 マコトは、始まった入場行進の列の中から、カナの姿を目で追いつつ、自問自答を繰り返した。



   ◇◆◇■□■◇◆◇


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