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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第三章 ヴァルプルギスの魔宴
188/188

188.魔宴の終焉

 炎竜の両手に乗るカナたち魔法少女は、強風に髪も服も大きくなびいて後ろへ飛ばされそうになる。だから、ゴツゴツする指のあちこちにしがみついていた。


 始終吹き付ける風のために薄目を開けて見ていると、もうもうと黒煙が上がる中をカラスの大群のように魔女が旋回しているのが見えた。


 正確に数えるのは困難だが、百人は下らない。まだ、獲物となる一般人を探しているようだ。


 時折、空中から魔法を繰り出している者がいるので、早く駆けつけなければと気が焦る。


「あやつらを焼き殺してよいか?」


 炎竜が、腹に響くような低音の声でカナに尋ねる。


「えっ?」


「かなり広範囲に散っておるから一回では無理だが、今視界に入る者どもだけなら一度に焼き殺せる」


 カナは大きく首を横に振る。


「お願い、殺さないで!」


(なに)(ゆえ)に? あやつらは、ああやって人を(あや)めておるのだぞ」


 カナは炎竜の目を見上げる。炎竜も目だけ下に向けた。


「私たちの魔法は人を殺すためのものではないの!

 みんなとの共存共栄のために、正しく使われるべきものなの!」


 すると、炎竜が口角をわずかに上げる。


「なら、あやつらの魔力を奪うことにしよう。

 殺すことにはなるまい」


「でも、空を飛んでいる魔女は魔力がなくなると落下するから、気をつけて!」


「案ずるな」


 炎竜はそう言うと、カッと口を開いた。すると、口の前に巨大な魔方陣が出現して、次の瞬間、前方にいた魔女たちが一人ずつ半透明の紫色の玉に包まれた。


 突然の出来事に慌てた魔女たちは、玉の中でもがいていたが、次々とぐったりしていった。やがて、その玉がスーッと地面に向かって落ちていく。


 カナたちが落下する玉へ視線を送ると、路上で炎竜や紫の玉を見上げて指さす魔女たちが見えた。かなりの大人数が路上を占領している。


 空中を旋回する炎竜は、空を飛ぶ魔女を次々と玉に包み込んで落下させる。


「もう空には魔女がおらぬ。次は地上を制圧する」


 そう言って炎竜は低空飛行を開始した。しかも、速度をグンと落として実にゆっくりと。


 優雅に羽ばたく炎竜が、魔女たちの上を旋回する。


 すると、頭上を通過された魔女たちはバタバタと倒れていった。


 カナはゴクリと唾を飲む。


「魔法少女たちよ。我の力を、しかと目に焼き付けよ。

 この力ゆえ、古来より我を欲する者が絶えなかった」


 炎竜が遠くを見る目になる。


「我はいくつもの町を破壊した。多くの人間を焼き殺した。

 しかし、それが人間への恐怖から来るものではなく、防衛の本能から来るものでもなく、ただただ(おの)が快楽を満たさんと欲するがゆえに、と気づいた時」


 ここで言葉を切った炎竜は、カナを見下ろす。


「我は人間に宿ることを決意した。優しい心を持ち、強い心を持つ人間に」



 それから、かなりの時間をかけて炎竜は町を旋回した。


 見渡す限り、動いている魔女がいなくなったと思われたとき、炎竜は急上昇した。


「見よ、魔法少女よ。この見渡す限りの焼け野原を」


 カナたちは辺りを眺望する。


「汝らの道は険しい。

 これから幾多の困難に見舞われるであろう。

 長年築き上げてきた友好関係を、汝らと相容れないはぐれ魔女側から一方的に破棄した代償は大きい。

 だが、案ずるな。善き魔女と悪しき魔女の違いは、一般人も理解しておる」


 炎竜も辺りを眺望する。


「この焼け野原にも草木は芽吹く。

 倒れた樹木にも新しい芽は出る。

 それを互いに協力し合って、大きく育て、実をつけさせよ。

 その実から出た種を植え、さらに実を増やせ」


 炎竜が大きく羽ばたいた。


「どんな困難に遭遇しても我が必ずや力になる。

 共存共栄への道はまだ開かれておる。

 希望を持って歩み出せ。

 晴れぬ嵐などないのだから」


 そう言って炎竜は空を見上げ、さらに力強く羽ばたいた。


最後までお読みくださいましてありがとうございました!

1年かかりましたが、中断がなければ「僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚」の分量を考えると4ヶ月で済んだはずです。。今思うと残念。


最後の場面で、魔宴で両親を亡くした少女を炎竜が救出して育てる、なんていうのが第二作だったのですが、三部作構想は別作品の形で持ち越し、今回はこれで完結とします。

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