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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第三章 ヴァルプルギスの魔宴
177/188

177.窮地を救う魔法少女たちと使い魔

 体育館の外に出たカナたちは、体がすくんだ。


 30メートルほどの距離を置いて、大勢の魔女が体育館を取り囲んでいるではないか。全員が黒ローブ姿で黒いフードをすっぽりと被っているので、まるで黒い壁のように見える。


 空を見上げると、数え切れないほどの魔女が旋回している。逃げた魔法少女を探しているのかも知れない。


「カナお姉様! イリヤはここです! マコトお姉様と一緒です!」


 イリヤの声が右側から聞こえてきた。カナがその方向へ振り向くと、剣を構えたマコトのそばでイリヤが手を振っていた。


 近くにいた上級生が「イリヤちゃんの魔法は私たちと同じレベルだから、驚いたわ」と感心していた。


 高校三年生と二年生に混じって立派に参戦している小学六年生の妹を見て、カナは奮い立つ。


 ここを守っている生徒たちは、全員、壁を背にして守りについていた。


 何人かが倒れてはいるが、回復魔法が使える生徒が治療に当たっている。その中に治療するミナを発見したカナは安堵の胸をなで下ろし、「ミナお姉様!」と声をかける。


 顔を上げたミナが「カナ! しっかりね! こっちは任せて!」と手を振る。


「カナ! おせーぞ!」


 後ろからユカリの声が聞こえてきた。振り返ると、半身の構えのユカリがニヤッと笑っている。


「すみません!」


「いいって! 行方不明って聞いたから心配したぜ! 無事で何よりだ!」


 リンがマコトに向かって「使い魔は?」と尋ねると、マコトは「ルクス、ケル兵衛は、手薄な反対側の守りについている。ハカセは、魔法警察を呼びに行った」と答えた。


 カナとイズミとナツは、「魔法警察」と聞いて困惑した表情を見せた。彼女たちの言葉は、リンが代弁した。


「魔法警察は、おそらく来ないわよ。連中は、ここの魔女たちとグルだから」


「何だって!」


「だから、今いる私たちがこの手で守り抜く。いいわね?」


「わかった!」


「さあ、一気に行くわよ! カナとナツちゃんは前面の魔女を、イズミちゃんは上空の魔女を蹴散らして!」


「「「了解!」」」



 反撃の火蓋が切って落とされた。


 まず、リンが万歳の格好で詠唱する。


「風の魔神よ、汝、その絶大なる力を我の前に示せ!

 かの者どもの周りに風を集め、渦となり、

 砂塵と、かの者どもを巻き上げ、竜のごとく天に昇れ!」


 すると、十人ほどの魔女を取り囲むように風の渦が巻き起こり、土も石も吹き上げて、どんどん高くなっていく。渦は激しく回転する竜巻となって魔女たちを吹き上げ、さらに周囲にいた魔女たちも容赦なく飲み込んだ。


 カナは、竜巻の右側にいた魔女たちに向かって左手のひらを突き出し、右手で左肘をつかんだ。このポーズの方が、最大の魔法を繰り出せるのだ。


「――突風(ブラスト)!!」


 短い詠唱の後、カナの左手の先に、金色に光り輝く魔方陣が出現。それは、直径2メートルもの大型の円形で、文様と古代文字が複雑に配置されたものだ。


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


 耳をつんざく音を残して、魔方陣から突風が飛び出した。それは、円錐状に広がっていき、十数名の魔女を一気に吹き飛ばした。


 ナツはオールラウンドプレーヤーだが、突風魔法は得意の部類だった。カナほどの威力はないが、竜巻の左側にいた五人の魔女を一度に吹き飛ばした。


 これで、包囲の一角が崩れた。


 イズミは、カナから10メートルほど離れて使い魔のドラーゴ・ロッソを召喚する。離れた理由は、この使い魔は3メートルもの高さがあるほど巨大で、しかも全身が炎で出来ており、熱くてイズミ以外は近寄れないからだ。


 ドラーゴ・ロッソは大きな翼を羽ばたかせて空を飛び、空中を旋回する魔女を口から吐く火炎で次々と追い払った。


 これで、上空からの脅威がなくなった。


 リンたちの攻撃とドラーゴ・ロッソの出現を目の当たりにして動揺する魔女たちは、我先にと撤退した。


 これが始まると、体育館の反対側を包囲していた魔女たちも、さらに学校の敷地内で隠れている生徒を探していた魔女たちも、慌てて従った。


 体育館の周囲を守っていた生徒たちは、勝利に沸いた。だが、体勢を立て直した魔女たちが戻ってくる可能性がある。なので、しばらくの間、彼女たちは警戒の手を緩めなかった。



 それから1時間ほどして、ハカセとハウプトマンとカナの母親であるマイコを先頭に警官隊が多数駆けつけた。


 ハカセの話では、魔法警察は多忙を理由に動こうとしなかったらしい。


 マイコは我が子の無事を喜び、校長を初めとする教員の非業の死を悼んだ。


 さらに、カナから魔法警察にはぐれ魔女の協力者が多数潜伏していることを知らされると、怒りに震えた。


 カナは、救出に駆けつけた人々の中に真弓の姿がないことに気づいた。


「お母様。真弓は?」


「今ここでは言えません。

 でも、必ず吉報をもたらすはずです。

 その前に――」


 マイコは、大きなため息をついた。


「魔法警察に乗り込んで大捕物をやらないといけないわね」



   ◇◆◇■□■◇◆◇


いくつか誤記を修正しました。

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