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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第三章 ヴァルプルギスの魔宴
174/188

174.魔女の箱船

「あなたに宿っている炎竜、そして使い魔リンを奪われたくないから」


 一姫(いつき)の指は、カナの隣にいるイズミも指さした。


「そして、あなたの使い魔ドラーゴ・ロッソも奪われたくないから。

 それだけじゃないわ」


 他の五人も次々と指さす。


「みんなの魔力を奪われたくないから」


 カナは振り返って級友を見渡す。


「魔力を奪われたくないのは、他の学年の生徒も同じはず。なぜ、私たちの学年だけここに保護したの?」


 すると、一姫(いつき)が肩をすくめる。


「わからない?

 魔力の総量よ。知らないなら教えてあげる。

 確かに、個人個人を見ると飛び抜けた生徒は各学年にいるけれど、学年単位で見ると、あなた方の魔力の総和は魔法女学校随一なのよ」


 カナたちは互いに顔を見合わせる。ここにいる全員の魔力の総和が全学年で一番なんて、考えてみたこともなかった。


 一姫(いつき)が右手の人差し指で、もう一度全員を指さす。


「つまり、魔法女学校で(くわ)(なし)(てい)()が真っ先に狙うのは、あなた方の学年。

 だから、学校を襲撃した。

 ところが、私がすでに保護したから、当てが外れたというわけ」


 カナは、さらに一歩前進した。


「お願い! ここから出して!」


「なぜ?」


「学校を魔の手から救わないと――」


「校長先生が何とかするでしょう。それに、あなたたちは、ヴァルプルギスの魔宴が終わるまでここにいてもらわないと」


「そんな悠長なことは言っていられない!」


「ヴァルプルギスの魔宴は、洪水のような混乱を世間に巻き起こすのよ。

 ここはノアの箱舟。あなたたちは、洪水の後まで生き延びるの」


「家族はどうなるの!?」


(けん)(ぞく)を含めた一族のことを言っているの?

 それは、自分たちのことは自分たちで何とかするでしょうね、生き延びるために。

 それが出来ないなら、(くる)(さき)(さく)に食われるまでよ」


「食われる!?」


「そう。あの魔女は、魔女を食らって生き延びる最強の魔女なの。

 それを覚醒してしまった、馬鹿なはぐれ魔女がいるのよ。

 (くわ)(なし)(てい)()って名前だけど」


 彼女が言い終わると、沈黙が支配した。


「さあ、おしゃべりはここまで。

 食事はたっぷりフルコースで出してあげるわよ。

 運動不足が心配なら、その辺を走ればいいし。

 勉強は自分たちで何とかしてね。

 それじゃあね」


 一姫(いつき)がクルッと振り返り、壁に向かって歩き始めた。


 と、その時、アキが床に目を落としながらつぶやいた。


「あっ。未来が変わった」


 その言葉に、一姫(いつき)が振り向いた。


「変わった?」


「うん。その壁の外、出られないよ」


「どうして?」


「馬鹿なはぐれ魔女が手下を集めてやってくるから」


 カナたち全員に緊張が走った。


「詳しく教えてくれる?」


「自分で占ったら?」


 と、突然、アキの前に瞬間移動した一姫(いつき)が両手でアキの首を絞めた。


「この行動は予知できたかしら?」


「と、当然……。い、言えば、違う行動に出たはず……」


「そうね。指を鳴らせば、首の骨は簡単に折れるから、そっちの行動になったかも。

 でも、それはまだ先ね。

 言いなさい、彼女たちがどういう行動を取るのかを」


「も、もう……遅い……」


「遅い?」


 首を絞められた状態のアキが、壁の方向を向く。一姫(いつき)もその方向を見た。


 彼女は目を丸くした。何かを感じ取ったようだ。


「まさか! 私の結界が破られた!?」


 彼女がそう言って()(ろた)えた途端、コンクリートの壁から黒ローブ姿の集団が次々とすり抜けてきた。


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