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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第三章 ヴァルプルギスの魔宴
168/188

168.宴の準備

 翌々日は、激しい雨に見舞われた。魔法女学校から50キロメートルほど離れたところに位置する山の岩肌が雨に濡れて暗灰色となり、不気味さを増している。


 そこは、(すぎる)(ふる)()村のそばにある(かしこ)(だけ)と呼ばれる険しく切り立った山。高さは100メートルほどある。


 山頂には飛び出た岩が3箇所あって、それらが漢字の『山』をかたどっているだけではなく、中央の頂は鳥の頭に見えることから、地元民の間では「魔界から飛来した鳥が羽を広げている姿」と恐れられている。


 山の中腹までは木々が(うつ)(そう)と生い茂っているが、そこから上は灰色の岩肌を見せている。まるで、緑に覆われた山を途中まで(えぐ)るように削り取ったかのようだ。


 (すぎる)(ふる)()村は早くから高齢化が進み、とうの昔に老齢者の一般人は田畑と家を売って村を離れた。代わりに移り住んだのは、穏健派のはぐれ魔女たちだった。現在では、三百人ほどが百戸の家に住んでいる。


 以前の彼女たちは、地下に潜る武闘派のはぐれ魔女たちとは一線を画していたが、世間の目はそのように見ていなかった。なので、武闘派が騒ぎを起こすと、そばにいて手が出しやすいからという理不尽な理由で、何もしていない穏健派が一般人の報復を受けた。


 そんな彼女たちは、米も野菜も売れず、すべて自給自足に回し、さらに世間から背を向けた。背を向ければ、不気味に思う一般人から、さらに迫害を受ける。


 警察も当てにならず、村には自警団が組織される。これが一般人をさらに刺激した。疑似魔法を手にした彼らと自警団との間には、争いが絶えなかった。


 これぞ、一般人と魔女との共存共栄を掲げるヤマト国の汚点。


 その犠牲となった村は、いつしか秘密裏に武闘派へと組み込まれていった。もちろん、見かけ上は一般人の迫害を恐れる羊のような穏健派を装っていたのだが。



 1月に入ってから、この村に多くの魔女たちが集まってきた。それも、訪れるのはいつも夜中だ。


 彼女たちの一部は、山の麓近くにある神社の社殿に入っていく。一部は、偽装された井戸の中へと降りていく。また一部は、山の中腹にある洞穴の中へ入り、ごく一部は家の床下へと潜っていく。


 中には青い目をした魔女も多数紛れているが、ヤマト国の魔女なのか海外の魔女なのかはわからない。


 なぜ彼女たちが人々の目を避けて(すぎる)(ふる)()村を目指し、(かしこ)(だけ)周辺に吸い込まれていくのか。


 それは、ヴァルプルギスの魔宴の準備だったのである。


 この宴は、ヤマト国で過去にも起きたことがある。


 その時は、ここから数百キロメートル離れた場所だったが、魔法警察を含めた警察や機動隊の協力の下、九つの魔女の一族と多数の有志の魔女たちが一致団結してこれを鎮めた。


 当時を知る魔女の一族、特に先頭に立った(はち)(じよう)()(なな)()()は、また前回と同様に協力態勢を敷いて、これを押さえ込もうと考えていた。


 折しも、はぐれ魔女たちが魔法女学校の生徒五人を誘拐したので、九つの魔女一族の当主がこの日に集まり、協議を開始した。


 ところが、それは遅すぎた。すでに、今回の宴には、はぐれ魔女たちの勝算があったのだ。


 なぜか。


 それは、前回失敗した狂先(くるさき)(さく)――破壊と混乱の魔女――の覚醒が、1月からの準備の末に時を同じくして完了したのである。



   ◇◆◇■□■◇◆◇


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