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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第三章 ヴァルプルギスの魔宴
167/188

167.正義の魔女の目的

 魔法女学校の校長室では、置き手紙を手にしたエリ校長が椅子に深く腰掛けて、机の前に立つアカリの熱弁に耳を傾けていた。


「ですから、生徒全員を明日からこの学校で寄宿させるべきです!」


「教室か体育館で?」


「寄宿舎がない限り、そうなります」


「結界はどうやって? 誰が学校全体に? しかも、宴が終了するまでずっと」


「なら、自宅待機――」


「やはり、登下校は車で徒歩禁止でしょう。車がない人は、持っている人に乗せてもらう」


「臨時のスクールバスとかは?」


「車を持っていない人をリストアップできていて、どういうルートを通るかまで決めているなら話を聞きましょう」


 半ば思いつきだったアカリは、沈黙によってそれを示すことになった。


 エリは紙をユラユラと揺らしながらため息をつく。そして、ニヤッと笑って紙に目を落とした。


「正義の味方気取りの魔女が護衛を買って出て、そのスクールバスに同乗してくれるかもしれないけれど」


「その、今回助けてくれた魔女の心当たりは?」


「そんなこともわからないようでは、困りますよ」


 そう言って、エリは紙を机の上に投げ出した。


「わざわざ手書きにしているのは、自分の正体を明かすため。あなたはこれを持ってきたときに気づいていないようなので、よく覚えておきなさい」


 アカリはツカツカと机の前に歩み寄り、紙を手に取ってじっくりと眺めた。


「それは、(くのつぎ)一姫(いつき)が書いたもの」


 エリの言葉にアカリはビクッとした。


「なぜ彼女が!?」


 すると、エリは「『あのお方』とは言わないだけよしとしましょう」と笑う。


一姫(いつき)の目的は、おそらく世界征服か(くのつぎ)家の復興。どちらも炎竜が必要であることには変わりないけれど」


「魔女の間では、今度の宴で世界征服を(もく)()んでいると噂されていますが」


「それは(くわ)(なし)(てい)()の方。一姫(いつき)は、最終的には世界征服かも知れないけれど、その前に現在九つある魔女の一族のどれかを蹴落として、そこに(くのつぎ)家を入れること。そして、魔女一族の頂点に立つこと」


「蹴落とされるのはどの一族ですか?」


「炎竜を奪うことを考えれば、(はち)(じよう)()であることくらい明らかでしょう?」


「……確かに。そのことは、(はち)(じよう)()は知っているのですか?」


「先ほど(はち)(じよう)マイコには電話を入れておきました。確かにそうね、って納得していましたよ」


「となると、またカナが狙われる――」


「もう狙われています。バスの襲撃の後に。マイコの車の自慢話が長くて、なかなか電話を切らないから困りましたが」


 エリは思い出し笑いをした。


「では、スクールバスの案をまとめてきます」


「どうぞ」


 アカリが退席した後、エリは天井をボーッと眺めていた。


 本当は、生徒を全員寄宿舎に集めて、しばらくの間警護していたい。しかし、そのような場所がない。


「マイコに相談しましょうか……」


 ぽつりとつぶやいたエリは、小型端末を(たもと)から取り出して電話を掛けた。



   ◇◆◇■□■◇◆◇


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