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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第三章 ヴァルプルギスの魔宴
165/188

165.自動運転車の自動攻撃

[第三章の主な登場人物]


蜂乗家(はちじょうけ)の人々>

カナ…………………………主人公。三女。中学二年生。世界五大魔法少女の一人だが魔法の制御が下手

ミナ…………………………長女。高校三年生。回復魔法が得意

マコト………………………次女。高校二年生。魔法より剣術や武術が得意

イリヤ………………………四女。小学六年生。召喚魔法が得意

マイコ………………………四姉妹の母親。世界三大魔女の一人

リン…………………………黒猫(メス)。カナの使い魔

ハカセ………………………白フクロウ。ミナの使い魔

ルクス………………………白猫(オス)。マコトの使い魔

ケル兵衛……………………ケルベロス。イリヤの使い魔

ハウプトマン………………大型犬の形状をした黒煙。マイコの使い魔



蜂乗家(はちじょうけ)の使用人>

冬来(ふゆき)真弓(まゆみ)……………………カナ専属のメイド。各種魔法に長けている



<国立ヴァルトトイフェル魔法女学校の学校関係者>

馬貝(まかい)エリ……………………校長先生。蜂乗(はちじょう)マイコに次ぐ力を持つ魔女

浅黄(あさぎ)灯子(とうこ)……………………蜂乗(はちじょう)カナの担任の先生。魔女

何条(なんじょう)アカリ………………熱血体育教師。風紀取り締まり担当。魔女



<国立ヴァルトトイフェル魔法女学校の生徒>

七身(ななみ)ユカリ…………………七身家(ななみけ)の次女。高校二年生。爆裂魔法が得意

六隠(ろくなばり)ハル…………………六隠家(ろくなばりけ)の三女。中学二年生。変身魔法が得意

五潘(ごはん)イズミ…………………五潘家(ごはんけ)の長女。中学二年生。火炎魔法が得意

四石(しこく)ミヤビ…………………四石家(しこくけ)の長女。中学二年生。幻影魔法が得意

三奈田(さなだ)ナツ…………………三奈田家(さなだけ)の三女。中学二年生。オールラウンドプレーヤー

二一宮(にいみや)フユミ………………二一宮家(にいみやけ)の次女。中学二年生。回復魔法が得意

壱番矢(いちばんや)アキ…………………壱番矢家(いちばんやけ)の五女。中学二年生。予知魔法が得意



<はぐれ魔女たち>

(くのつぎ)一姫(いつき)……………………魔女を狩る魔女。一族の復興をもくろむ

桑無(くわなし)貞子(ていこ)……………………強大な魔力の魔女

狂先(くるさき)(さく)………………………破壊と混乱の魔女

無東(むあづま)(ひそか)………………………アサシンの魔女

 根雪がまだそこかしこに残る4月8日。今日は国立ヴァルトトイフェル魔法女学校の入学式と進級式。


 それまで、はぐれ魔女や国立魔法科学研究所が引き起こした事件は、生徒たちが顔を合わせると挨拶をするかのようにその話題で持ちきりだったが、今は違う。


 誰もが口にするのは、4月末に起こると噂されるヴァルプルギスの魔宴のことであった。


 式典でも()(かい)エリ校長は「噂に振り回されず、冷静に行動すること」と訓辞の中で述べていたが、内心は生徒たちも自分たちも巻き込まれて冷静になれないことを極度に警戒していた。


 あの(てい)()の置き手紙が目の前に浮かんでくる。


『次はヴァルプルギスの魔宴にご招待します。

 そこでお目にかかりましょう。

 ただし、あなた方が生きていれば、の話ですが』



 進級式を終えたカナは、中学二年生になってウキウキ気分であった。新入生は五人入ってきた。ついこの間転校してきて、もう先輩なのだ。


 授業もなく、ホームルームで解散。


 みんなと一緒に昇降口を出て話をするのが楽しい。体を回転させ、遠心力で鞄を回すのが面白い。スキップするのも愉快だ。


 そうしているうちに、校門の方で真弓が頭を下げる姿が見えてきたので、カナはスキップをやめた。


 彼女は、校門近くに停めてあった送迎用の自家用車へ乗り込み、イズミとフユミを手招きする。


 中学二年生に進級するのを契機に、カナは隔離されていた場所から今まで住んでいたマンションに戻っていて、今日もこの車で登校した。しかし、送迎用の車を持っていない二人が心配で、安全のためにしばらく登下校は一緒に乗ることに決め、昼休みに真弓を説得したのだ。


「お母様には許可を取り付けたのよね? 当然、向こうのご家族にも」


「はい。もちろんでございます、お嬢様」


 どんな面倒なことでも交渉をきちんと進めてくれる真弓へ、カナは満足げの表情で返した。


 後から乗り込んだ二人は、運転席に座っている真弓へ恐縮するように頭を下げて挨拶をする。


 彼女たちに「いつもお嬢様がお世話になっております」と挨拶する真弓だが、彼女はもちろんハンドルを握らない。この自動車は、音声認識機能もある自動運転の車なのだ。


 前に一度、魔獣との戦いで車を破壊されたため、耐久性を強化し、最新の装備も追加したものに変更された。


 カナが「フユミんちにお願い」と運転席へ声を掛けると、運転席の天井辺りから「ヴォール」という男性の声が聞こえてきて、ひとりでにエンジンが掛かり、車は緩やかな加速で発進する。


 イズミが「なんでドイツ語なの?」と言うので、カナは「何で?」と真弓にパスをする。


 すると、真弓より先に車の方が「それは――」と答え始める。


「ヴォールは『良い』という意味があり、英語のwellと同じで、この場合は『承知しました』になります。ヤヴォールというのもありますが、ほぼ同じ意味ですが、こちらは『もちろんです』という意味になります。軍隊では後者が使われることが多いです。yes, sirのようなものです」


 カナは「答えになってないから、メンテナンスが必要」と言って皆を笑わせた。


 車は混雑を避けつつ最短の距離で進むため、カナたちが談笑して盛り上がっている途中で目的地へ到着してしまった。車は木製の高い塀を左に見ながら減速し、屋根付きの古風な門の前でスーッと停車した。


 と同時に、和服姿の女性使用人が門をサッと開けて飛び出してきた。車が到着するまで扉を薄く開けて覗いていたとしか思えない速さだ。


二一宮(にいみや)家に到着いたしました。通常選択されるルートの途中で発生した(てん)()(やま)(かわ)橋付近の混雑を迂回したことにより2分35秒節約――」


「わかったから、もういい」


 苦笑するカナは、車が語り始めた自慢話みたいな報告を打ち切らせ、車を降りたフユミに手を振り、使用人へ頭を下げた。


「次はイズミんちへお願い。短縮時間の報告は不要だから」


「ヴォール」


 ここからイズミの家までは5分もかからない。長話になるようなネタを避けて、今日の式典で(あさ)()(とう)()が一年の担任から二年の担任に繰り上がることや、先生が式典で居眠りしていたことを話題にしていると、突然、車がしゃべり出した。


(てん)()(やま)(かわ)橋付近で異常を検知。渋滞発生。予想遅延時間5分24秒」


 カナは「そんなのいいから」とため息をつく。すると、再び車が報告を始めた。


「前方200メートルにて強大な魔力を検知。緊急モード移行、車体強化、ナンバー偽装開始」


 すると、車の外側でガタガタ音がした。車内は何も変化しないので、車の言葉通りなら周囲に装甲板でも追加されたのだろうか。


 カナは前方へ目をこらす。歩道の先に黒いローブ姿の集団が見えた。数はわからない。


「魔力によるスキャンを検知。緊急右折。迂回コース選択。予想遅延時間6分48秒」


 報告が終わった途端、車が勢いよく右折し、遠心力でカナもイズミの左に倒れた。車は、住宅街に入った。


「追尾物体確認。魔力による防御に切り替え。前方の一般人の視界を遮断」


 振り返ると、50メートルほど後方に黒ローブが3つ、1メートル半くらいの高さで地面と平行の姿勢で飛んでくる。フードをすっぽり被った魔女のようだ。


 一方で進行方向の右斜め前には、笑いながら歩いている主婦らしい女性が二人いる。そこを車が通り過ぎた途端、二人は手で両目を覆った。突風でも顔に受けたのだろうか。


 その直後、カナでもビクッとする強さの魔力を持つ3つの光の玉が、車の後方から発射され、追尾する三人に直撃した。


 全員が打球のように遠くまで飛ばされ、路上にゴロゴロと転がって動かなくなった。


 カナは「ちょっと、あの人たちに何をしたの!?」と車に問い詰める。


「『あの人たち』という言葉から一般人ですね? 車が通過するときに発生する風を多めに送りました」


 前も後ろもどっちも『あの人たち』になることに気づいたカナは、「じゃあ、追っ手は?」と()く。


「半径200メートル以内に魔力反応なし。しかし、(てん)()(やま)(かわ)橋付近で異常は継続中のため、警戒を継続します」


「無視された……」


 カナは、頭をかいてぼやいた。



   ◇◆◇■□■◇◆◇


第三章からエディタを変えました。ルビや傍点が少し違います。

それまでの章との統一感を出すには、相当な修正量なので、

申し訳ありませんが、当面の間このままとさせてください。


出版とかで編集し直すときが一番いいタイミングではありますが、そもそも出来るのかと……。

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