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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第二章 魔法女学校
160/188

160.異空間へ

 カナは、目の前が真っ暗になった。同時に、足が地に着いていない感じがした。


 部屋の電気が消えたにしてはおかしい。床がなくなって宙に浮いたように感じるからだ。


「これは、魔法で作られた空間に違いないわ……」


 独り言をつぶやいたカナは、全神経を集中して、周囲の状況を把握しようとする。


 彼女は大きく頷いた。


(やはり、魔力が私の周りを覆っている。結界を作って暗闇に見せているみたい)


 結界ならば、歩いて行けばどこかでぶつかるはず。


 だが、迂闊には歩けない。どこに貞子(ていこ)が隠れているか、わからないからだ。


「リン! 真弓!」


 無駄とは思ったが、二人を呼んでみる。


 しかし、自分の声が暗闇に吸い込まれる。もちろん、返事はない。



 とその時、前方に、ボウッと人の顔が浮かんだ。暗闇の中で首から上だけがライトに照らされたかのようだ。


 もちろん、その生首は貞子(ていこ)だ。


「私をどうするつもり!?」


 カナが鋭く問い詰める。だが、貞子(ていこ)はケラケラと笑っている。


「どうするかって? 決まっているじゃないか。

 炎竜を渡してもらうよ。

 何度も手間をかけさせるから、こうして異空間を作ることになったんだけど、このためにどれだけ魔力を使ったことか……。

 苦労話を聞かせたいよ」


「いい加減に諦めて! 炎竜は渡さない!」


「そう言うと思ったよ。

 ……そうだ、見せたいものがある。

 ほら――」


 貞子(ていこ)が左を向くと、顔の左隣に大きくて丸い鏡のような物が出現し、そこにリンと真弓が彷徨(さまよ)っている姿が映し出された。


「あいつら、しつこいねぇ……。この異空間に入り込むなんて。

 でも、どんどん遠くへ離れて行ってるから、ここに気づいていないみたいだね。

 そして、こいつら――」


 今度は右を向くと、顔の右側に同じ大きさの鏡が出現し、そこに魔獣と戦う同級生が映し出された。


「魔法女学校のクラスメイトだろう? ちょっと侮っていたよ。

 あの魔獣相手にここまで対抗できるとは思ってもみなかった。

 せっかく魔道書から召喚したけど、足止め程度にしかならなかったね。

 いずれ、魔獣の包囲網を突破して、あの部屋に殺到するだろう。

 でも、この異空間には入ってこれないよ。

 校長先生は別だけどね。……あっ、君の母上もか」


 左右の映像が暗闇の中に消え、貞子(ていこ)の顔がカナの方を向いた。


「さてと、炎竜を召喚しよう」


「えっ?」


「君がじゃない。僕がだよ」


「どうやって? 宿主の私だって召還できないのに?」


「これができるんだね」


「だから、どうやってできるの?」


「最近発見したんだ。

 盗んだ二つの魔道書それぞれに不思議なページがあってね。

 どちらも詠唱の言葉がとぎれているんだ。左半分、右半分って感じで。

 で、そのページを貼り合わせると、言葉がつながる。

 そうやって隠していたんだね、炎竜を呼び出す言葉を」


「!!」


「これが長いんだ。しかも、高速詠唱しないといけないときた。

 それがこれさ」


 宙に浮く貞子(ていこ)の顔が、早口言葉並の高速詠唱を始めた。


 生首が、聞き取れない速さで詠唱し、炎竜を召還する。


 ゾッとする光景である。


 とその時、カナの胸の谷間付近で、ドクンドクンと大きな鼓動が聞こえてきた。


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