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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第二章 魔法女学校
154/188

154.車を追う魔獣

 まだ雪が残っているマンション前の歩道では、真弓が自動運転車を横付けにして、カナたちを待っている。


 爆破された車と同じ型なので、事件を思い出したカナは歩みがのろくなったが、マイコに急かされて渋々乗り込んだ。


 後部座席にマイコとカナが乗り込むと、運転席に真弓が急いで乗り込んできた。


「奥様。

 同行を予定していた警備の車が一向に現れないのですが」


「まったく……想定通りの行動(こと)をしてくれるわね」


「では、プランBで?」


「それで行けるところまで」


「承知いたしました」


 車は、雪道を急発進する。


 たちまち、車窓の景色が恐ろしい速さで後方へ飛んでいった。


 加速で背もたれに体をぶつけたカナは、目を丸くする。


「お母様、こんなに急いでどこへ行くのです?

 それと、プランBって?」


 しかし、母親は前を向いたまま、答えない。


「お母様――」


 カナの顔の前へ、母親の手のひらが向けられる。


「話は後で」


 遮られたカナは、おそらく誰かが追いかけてくるのだろうと推測し、後部のガラス窓へ振り返る。


 ――来た。


 50メートルほど後方に、黒い煙の帯のようなものが追いかけてくる。


 道を曲がると見えなくなるが、直進すると見えてくる。


 カナは「あれは何?」という言葉を飲み込んだ。


 尋ねたところで、答えてくれるとは到底思えなかったからだ。


 だが、幸いなことに、真弓が答えを口にしてくれた。


「この車のスピードに付いてくるとは、かなりしぶとい魔獣ですね」


「あれは黒豹。

 逃げた魔獣の中で、一番足が速い。

 しかも、警備の車をやる(ヽヽ)くらい朝飯前の魔獣よ。

 それにしても、貞子(ていこ)は呆れるほど用意周到だこと」


「留置場からの遠隔指示で動いているのでしょうか」


「もうすでに塀の外よ」


「やはり、魔法警察は頼りないですね」


「最初から、わかっていたけれど……」


「しかし、しつこいですねぇ。

 あの魔獣を倒しますか?」


「そのためには、車を止めないと。

 それは出来ないので、使い魔に時間稼ぎをさせます」


 マイコはそう言うと、指をパチンと鳴らした。


 カナは、何が起こるのだろうと後方を振り返ると、突然、窓ガラスが黒い煙のようなもので遮られた。


 たちまち、その煙は大型犬の姿になる。マイコの使い魔のハウプトマンだ。


 ハウプトマンは、車から飛び降りて、迫り来る黒煙の帯へ突進した。


 彼らの格闘は、車が急カーブを曲がったので見ることは出来なかった。


 車は再び直進したが、追いかけてくる黒い煙もハウプトマンの姿もない。


「足止めに成功したようですね」


「当然です。

 あとどれくらい?」


「2分もあれば到着します」


 その時、カナは魔法女学校の校門が通り過ぎるのを見た。


 ――もうここには通わなくなるのだろうか。


 そう思うと、居ても立ってもいられず、答えのないであろう問いを母親にぶつける。


「お母様。

 もう学校には通わないのでしょうか?

 隔離されるのでしょうか?」


 すると、マイコがゆっくりとカナの方へ向いた。


「学校の授業は受けられるので、心配は要りません」


「でも、学校は通り過ぎて――」


「行けばわかります」


 カナは、再び前を向いた母親の横顔をジッと見つめていた。


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