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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第二章 魔法女学校
133/188

133.消された記憶

 カナは、近づいてくるイズミを前にして、何と声をかけようかと迷った。


 だが、それを顔に出してしまうと、相手も困るだろう。


 なので、ここは素直に再会を喜ぶことにした。「笑顔、笑顔」と心の中でつぶやきながら。



「イズミ! 久しぶり!」


「……誰?」



 全く想定外の返事。


 笑顔が消えたカナは、つまずいたように足を止める。


 イズミはというと、急に顔をしかめている。



「誰って、カナ――」


「だから、誰?

 なんで、私の名前を知っているの?

 ああ……、去年、世界選手権大会の出場選手に名前があったから知っているのね?」


「というか……」


「そうでしょう?」


「イズミ。覚えていないの!?

 私は蜂乗(はちじょう)カナ」


蜂乗(はちじょう)……」


 イズミが何かを思い出そうとしている。


「覚えていないかなぁ?」


「準決勝で当たった?」


「そうそう!」


「ごめんなさい――」


「ううん、いいのいいの!

 ど忘れって事あるから――」


「いいえ、そうではなくて。

 魔法少女世界選手権大会に出た記憶がないの」



 カナは衝撃を受け、雪の上に座り込んだ。



「どうしたの? 大丈夫?」


 イズミは、カナに手を差し伸べる。


「……なぜ……どうして……」


 カナの目に大粒の涙が浮かんできた。


「泣かないで。

 蜂乗(はちじょう)カナという人と準決勝で戦ったという話は、ネットのアーカイブで見たことはある」


「記憶――喪失?」


「そうじゃないの。

 記録ではそうだけれど、自分が出場した(ヽヽヽヽヽヽヽ)という記憶が全くないの。

 映像に残っている自分が、自分じゃない感覚。わかる?」


「ごめんなさい。わからない……」


「自分が七身(ななみ)ユカリとまで戦っているなんて、あり得ない。

 だって、そんな記憶、ないんだから」


「もしかして、初日から?」


「私、大会期間中は、ずっと両親の看病をしていたの。

 テレビも観ていないのよ。

 それなのに、周りのみんなまで『大会に出場した』と言うから、相手の気を悪くしないように話を合わせていたけれど、もう精神的に参ってしまって……」



 その時、真弓がしゃがみ込み、カナの耳元で囁く。


「うん、わかった」


 頷いたカナはイズミを見つめ、立ち上がってからコートの雪を払った。



「覚えていない原因は、わかったわ。

 ここじゃ何だから、私の車に乗らない?

 学校もそろそろ始まるだろうし」


「いいの?」


「うん。

 それで……友達にならない? 今から。

 初めまして――でもないか。

 私は、対戦相手だった蜂乗(はちじょう)カナ。十三歳。同い年。

 よろしくね」


「こちらこそ。

 五潘(ごはん)イズミよ。

 そして、こちらは、二一宮(にいみや)フユミさん」


「よ、よ、よ、よろしくお願いします。

 に、に、二一宮(にいみや)フユミです。

 た、大会には、あ、姉が出ましたので、はじめまして、ですです。

 は、蜂乗(はちじょう)カナさんみたいな雲の上の人がここにいらっしゃるなんて、お、驚き、ですです」


 カナは、二人の手を取った。


「さっ、行こう!」



 真弓を先頭に、カナたちは踏み荒らされた雪道を戻り、車へと急いだ。


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