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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第二章 魔法女学校
131/188

131.疑似魔法を悪用する卑劣漢

 公園の木々の間を縫うS字カーブ。


 その道に積もった雪には、多くの足跡の他に、足を引きずったような跡が混じる。


 抵抗したり争ったりした痕跡か。


 カナは、それらを踏みながら、ひた走る。



 時折滑りつつも、カーブに沿って駆け抜けると、急に視界が開けた。


 そこで見たものは、雪一面に覆われた円形広場の中央に、二人の少女を取り囲む八人の男たち。



 囲まれている二人は、カナと同じ色のダッフルコートを着て、背を向けていた。


 そのうち、左側の少女が、赤々と燃える炎を全身に纏っている。


 ロングストレートの黒髪が宙に舞い上がり、大きく揺らめく。



 この魔法の発動を感じたのだ。



 右側にいる緑髪のショートヘアの少女は、しきりに周囲を見回す。


 おそらく、男たちの形相を見て、怯えているのだろう。



 ただならぬ空気。


 円陣の外では、雪を被った遊具設備のパンダやライオンなどの動物が、固唾を呑んで見守っている。



「みんな、やめてえええぇ!!」


 立ち止まって、腹の底から叫ぶカナ。


 黒髪の子を除いた九人が一斉にカナを見た。


 視線が全身に突き刺さって、痛い。



 男たちは、眉をつり上げ、舌打ちをする。


「ちっ、野次馬だぜ」


「どっから嗅ぎつけて来たんだか」


「あの炎が助けを呼んだんかもしんないぜ?」


「おい、あいつ、同じ格好してんじゃん。

 もしかして、化け物女学校の仲間か?」


「へっへっへっ。きょーびの化け物狩りは、大漁だぜ」



 円陣の連中が、突然の魔法少女の登場に舌なめずりする。


 その時、黒髪の少女が、後ろ向きのまま叫んだ。



「来ないで! 邪魔!」


 カナは激しいときめきを覚えた。


「――その声は、イズミ!?」



 決勝戦の後、イズミは医務室から忽然と姿を消していた。


 空のベッドを前にして涙で濡れてから、実に、三ヶ月ぶりの再会である。



 だが、今は再会の喜びに浸る状況ではない。


 イズミの剣幕に、あの時とは違うカナは、負けなかった。



「その火炎魔法は、一般人に向けたら駄目!

 下手すると、全員が一瞬で燃え尽きる!」


「手加減するから、大丈夫!

 だから、手出しはしないで!」


「駄目よ! 町中でその魔法は使わないで!」


「私たち、襲われているのよ!

 この状況を見れば、わかるでしょう!?

 正当防衛よ!」



 一人の男が、カナからイズミの方へ顔を向けた。


「んだ、てめえ!

 ちょっと可愛がってやろうと思ったのに、襲うたあ、どういう因縁だぁ!

 喧嘩をふっかけてきたのは、てめえだろうがよぉ!?」


「腕をつかんで、髪の毛をつかんで、そのどこが『可愛がる』と言うのよ!?」


「俺たちの言うこと、聞かねえからだろう!

 とにかく、喧嘩を仕掛けたのは、てめえらの方。

 それに、この状況で魔法を使ったら、どうなるかわかってんだよな?」



 一般人への魔法は、正当防衛でも禁じられている。


 それを逆手に取った悪辣なやり方に、カナは唇を噛む。



 とその時、もう一人の男が、右手の黒手袋の上から、バレーボール大の青い火の玉を出現させた。


「兄貴、早いとこ、こいつらに焼きを入れてやろうぜ。この『疑似魔法』で」


 隣にいた男が、得意そうに声を上げる。


「そうそう。魔法少女とはいえ、この火の玉を防ぐ(すべ)はないぜ。

 おい、みんな、用意しろ!」


 すると、そいつを入れた七人が、黒手袋の上に同じ青い火の玉を次々と出現させた。



「これは、お前らの魔法ではキャンセルできないからな」


「しかも、自動追尾型だから、逃げられないぜ」


「体にぶつかると、長時間痺れる代物よ。

 へへへ、確実に漏らすはずだぜ」


「けけけ、下着が濡れるとこ、見てみてえぜ」


「一般人を見下す能力者に制裁を」


「そうだ。俺たちにも力があることを、てめえら化け物に思い知らせてやる」


 男たちは、薄気味悪く嗤いながら、次々と言葉を継いでいく。



 と突然、カナに最も近い側の男が、全身をクルリと180度回転させて、カナの正面を向いた。


「まずはその前に……そこの赤い髪の雌豚にぶつけてやるか」


 奴は、ニヤニヤしながら、雪合戦でも始めるように青い火の玉を振りかぶった。



 その刹那――、


 カナの左から黒い影が現れて、目の前に立ち塞がった。


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