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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第二章 魔法女学校
130/188

130.魔法発動の兆候

「ちょ、ちょっと!

 雪なのに、加速するの!?」


「お嬢様。他のお車と間が開いてしまいましたので、挽回するためです」


「それって、あたしのせい――と言いたいの?」


「滅相もございません。

 時間の挽回の判断は、車が自動で行っておりますので」


「何? それって、決められた時間に到着しようとするから?」


「左様でございます」



 雪道を快走する自動運転車は、乗っている方がヒヤヒヤしてくる。


 実際、自動運転がどこまで対応できるか、試される場面が続出した。



 四つ角の手前で急に減速したかと思うと、左から子供がひょっこりと顔を出す。


 人が隠れていることを何らかの方法で感知したのだろう。


 横をすり抜けたバイクが蹌踉めくと、回避しようと、減速しつつ迂回する。


 前方が渋滞していそうに見えると、迷うことなく、狭い脇道へ入っていく。



 道路状況を俯瞰して、全ての車、歩行者を把握しているシステムが、車の最適な動きを決めているかのようである。


 しかも、一度も止まらない。



 驚いたことに、エンジン音がほとんど聞こえないし、揺れもさほど感じない。


 雪道の凸凹がなければ、カップになみなみと注がれた紅茶でもこぼれないであろう。


 20世紀に、車内の静けさを形容する表現として「聞こえるのは、時計の針の音だけ」と宣伝した例があるが、さらに「感じるのは加速くらいだ」と付け加えたいほど。


 加速が体に掛からなかったら、居間のソファにくつろいでいるような錯覚を覚えたに違いない。



 車窓を流れる景色に、時折気になる物が見える。それを、視線で追う。


 それ以外は、ボーッとして退屈な時間。


 快適な運転は、どうやら、手持ち無沙汰の人間には睡眠を誘うようである。



「お嬢様。もう少しで学校に到着いたします」


「そっ。眠っ」


 あくびを始めたカナ。



 とその時、



 キィィィィィイイイイイーン…………



 彼女の心にしか聞こえない微かな音が届いた。



 そう遠くはない。



 これはおそらく、発信源の近くでは、体を貫くほどの強烈な魔力のはず。



 カナは、ゾクッとし、あくびを途中で飲み込んだ。


「止めて! 魔法が発動されるみたい!」


「わたくしも感じました」


「でしょ!?」


「でも、市中の魔法に関わってはいけないと、奥様が――」


「止めなさい! ここでは私があなたの主人です!」


「はい、お嬢様」


 車は、真弓の手動操作で急停止。


 前のめりになるカナと真弓を乗せながら、車はスリップし、車の向きが少し斜めになった。



 何も持たず、左のドアを押し開いて飛び出すカナ。


(お願い! 魔法で一般人を巻き込まないで!)


 彼女の直感が語りかける。


 まだ見ぬ現場だが、魔女VS一般人、魔法VS疑似魔法、に違いないと。



 カナは、ガードレールを軽々と跳び越えた。


 その足は、踏み荒らされた雪を蹴る。


 すぐ近くには、雪を被る木々が生い茂った公園が。


 彼女は、その中へ突進した。


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