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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第二章 魔法女学校
124/188

124.姉妹一同集合

 カナは大きくため息をつくと、セーラー服の上からラクダ色のダッフルコートを着て、紺色のリュックを背負った。


 これに、白のショートソックス。濃い茶色のローファーに似たシューズ。


 以上が中学校の冬用の登校姿である。


 そして、残り3分の1のトーストを頬張りつつ、扉の外に出て、エレベータへと急ぐ。



 貸し切り状態だった下りのエレベータのドアが開くと、カナはホテルのように広いエントランスホールに足を踏み出した。


 すると、少し離れたところに、紺色のダッフルコートを着て首を長くして待っていたイリアの姿が見えた。


 彼女は灼眼を輝かせ、右手をワイパーのように振り、左手でリュックをブンブン振り回しながら走ってきた。



 イリヤは小学校五年生だが、同い年の平均身長より低い135センチメートルの体。


 それにぴったり合う学校指定のダッフルコートがなかったのか、ダボダボのコートが走ってくるように見える。


 コートの中は、水色の襟の付いた白色のセーラー服と水色のミニスカートのはずだが、そちらのサイズも心配である。


 白のショートソックスも普通の靴下に見えてしまう。



「カナお姉様! おはようございまあああああっす! もう1時間もお待ちしておりました!」



 そう言いながらイリヤは、カナの利き腕ではない右腕にしがみついた。


 ここは、甘えん坊の彼女がしがみつく定位置。


 そして、軽くユラユラと揺れながら、カナの右腕に体を預け、袖に顔をこすり、安堵の息をつく。



「うっそ!」


「はい、嘘です! 本当は59分です!」



 カナを見上げるイリアは、銀髪のツインテールを可愛く揺らし、エヘヘと笑う。


 そうして、絶対に離さないと言わんばかりに両腕に力を入れた。


 イリアの顔は、丸顔である以外は、カナによく似ている。


 百人中九十九人は、姉妹だと言い切るだろう。



「二人とも、声デカい。

 近所迷惑――」



 その声は、マコト。


 高校一年生で190センチメートルの長身を濃緑色のダッフルコートで包んでいるが、いつ見ても男装の麗人。



 彼女は、左肩にボストンバッグ型の灰色の学生鞄を提げ、瞬時に詠唱し、右手を真横に伸ばした。


 たちまち、辺りは緑色の霧に囲まれる。


 彼女の得意とする結界だ。



 マコトのダッフルコートの下は、紫色の襟の付いた白色のセーラー服と紫色のミニスカートのはずだ。


 彼女の美貌には、セーラー服よりもスーツやタキシードが似合う。


 だが、残念ながら、これから彼女たちが通う国立ヴァルトトイフェル魔法女学校は、夏も冬も、スーツ系の制服ではないのだ。



 マコトは、黒髪のベリーショートをサラッと掻き上げる。


 二人が姉妹だとは、誰も思わないだろう。


 いつ見ても、兄と妹だ。



 マコトの登場に、カナは慌ててトーストの残りを口の中へねじ込む。


 頬袋のある小動物みたいな顔になったカナは、すぐには声が出なかった。



「……マ、マコトお姉様、(ゴクリ、)……イリヤちゃん。

 いろいろと謝らないと……。

 ごめんなさい!」


「カナお姉様! 気になさらないで!

 私だって学校の天井、壁、床、校庭に、いくつ穴を開けたことか、覚えていません!」


「カナは、その謝罪の言葉で気が晴れるから何度でも謝っているのだろうけれど、こっちは同じことを何度も聞かされている。

 耳にたこができる相手の気持ちも考えるんだな」


「ごめんなさい……」


「また謝っている。

 そのうち、何かにつけ、条件反射的にその言葉が出てくるから、気をつけること。

 条件反射で口から出てくる言葉なんか、心がこもっていない。

 そんな無意味な言葉が、いかに相手を困らせ、時には傷つけるか。

 気づいたときは遅いから」



「あらあら、妹をいじめているマコト、はっけーん」



 三人が声の方を振り返ると、濃緑色のダッフルコートを着たミナが、糸のような目をして笑みを浮かべながら、結界の中へスーッと入ってきた。


 ミナは、マコトより顔一つ背が低い感じがする、スレンダーな体型。


 桃色のセミロングで、左右の毛先の一部を2つの緑のリボンで結んでいる。


 カナを面長にしたような顔だが、糸のような細い目が特徴。


 この目は、怒りのツボを突いたときにだけ開かれる。



「「ミナお姉様。おはようございます!」」



 カナとイリヤは、ハモった。


 それからカナは、続く「ミナお姉様、ごめんなさい」の言葉を、マコトの顔を見て飲み込んだ。


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