表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第二章 魔法女学校
122/188

122.転校初日の雪

 1月10日朝8時。


 昨夜から雪をこれでもかと地表へ落とす厚い雪雲が、未だに天候を科学で制御できない人間どもを嘲笑(あざわら)う。


 カナは、紅色の襟が付いた白色のセーラー服と紅色のミニスカートの姿で窓辺に立つ。


 彼女は、バターをたっぷり塗ったトーストをかじりながら、雪をかぶる建造物を見下ろす。


 そして、天空に不気味な起伏を作る雲を恨めしそうに眺めた。



 転校初日から、雪の洗礼。


 今年もツキがない。



 強制的に学校を転校させられたことに、まだ(はらわた)が煮えくりかえる。


 気持ちがそちらに向かうと、またあの日の出来事が脳裏に浮かんでくる。


 カナは、セーラー服の左胸のポケットに縫い込まれた認識票を、布の上からソッと押さえた。



 この認識票は、名刺サイズで柔らかい素材のもの。


 名札、学生証、生徒手帳、入館証を兼ねていて、学食など施設利用時の(学内利用のみ有効な)電子マネーまでチャージできるようになっている。


 当然、非接触型である。


 なお、制服を別人のものと交換しても、入館や電子マネー利用時は顔認証がプラスされるので、なりすまし利用はできない。メイクを施して、そっくりさんに変装しても駄目だ。



 そう。この認識票。


 学校が違っても、システムは同じだから、これも以前と同じ。


 だから思い出す。あの忌まわしい出来事を。



   ◇◆◇■□■◇◆◇



 カナは、五人の男子生徒に、無人の教室へ連れ込まれた。


 そして、強引に財布を取り上げられる。


「てめえ、しけた財布だなぁ。ああん?

 これじゃ、五人分の朝飯も昼飯も夕飯も買えねえぜ」


「おやつもな。ちょーベリベリ腹減ってんだよ。

 俺ら、せいちょーき、だっし」


「これしか財布に入ってねえって、どう考えてもおかしいぜ。

 優勝して賞金をたんまりもらってんだろ?」


「親に取り上げられるったって、小遣いくらい出るはず。

 持ってねえことねえのは、わかってんだよ!」


「……そっか。服の認識票に、あらかたチャージしてるってことか。

 なら、一緒に来いよ。

 全員分の金をこれから払ってもらおうじゃねえか。

 そんくらい、端金(はしたがね)だろ?」


「おい、いやとは言わせねえぞ。

 だいたい、魔女らが人間の金を持ってるってえのが気にくわねえ。

 てめえらバケもんは、山ん中に住んで、悪霊とか魔物とか食らってりゃいいんだよ」


「グツグツと釜で煮込んでな」


「それに、魔力が使える能力者だからって、使えねえ俺らに見せびらかしやがって。

 ちょーしに乗ってんじゃねえよ!」


「魔法少女は、一般人を見下してんだろ?

 俺ら、下等動物以下かよ? そんなに偉いんか?

 何様だっつーの!?」


「おっと、手を出すんかよ。

 なら、その手をへし折ってやろうか?

 この手袋に込められた『疑似魔法』は、大人の十人分の握力が出るんだぜ」


「おい、魔法少女さんよ。そんな手で、真似できんのか?

 そして、ナイフも、ほれ、こうやって魔法のように出せるんだぜ」


「そのナイフの先で、顔に平行線を何本も書いてやれよ。傷口が塞がらないようにな」


「魔女には、醜い顔がお似合いだよ」


「逃げんな! こらあ!

 こっち来いよ!

 てめえがいねえと、顔認証ができねえぜ!

 服だけ脱がしても金が降ろせねえだろうがよ!」


「んだ、てめえ!

 やんのか!?」


「うわっ! 髪の毛が輝いて、逆立ってきたぜ!

 これだから、バケもんは!」


「あっ! 魔方陣だぁ!!」


 足下に魔方陣を出現させたカナは、全身が光に包まれた。


 すると、一斉に、すべての机と椅子が宙に浮き上がる。


「「「「「わわわわわっ!!」」」」」


 それらは五人を巻き込みながら、教室の廊下側の壁に次々と激突し、積み上がった。


 さらに、巻き起こった疾風で、その壁一面が吹き飛び、廊下の窓ガラスが粉々に砕け、窓枠ごと中庭に散乱した。



 重傷を負った五人は、恐喝者から一転、魔法の被害者を演じた。


 彼らの保護者は、当然、カナを訴える。


 最終的には、示談となったが、これでカナは謹慎処分。


 カナの無実を信じるミナ、マコト、イリヤは、被害者面を通す五人の属する不良グループの挑発に遭い、魔法を行使した結果、彼女たちも謹慎処分となった。



   ◇◆◇■□■◇◆◇


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
cont_access.php?citi_cont_id=62234447&si
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ