121.問題児の受け皿
カナは、急いで母親に電話をかけたが、保留音しか聞こえてこない。
対策会議の真っ最中だから、また娘からの電話で会議を中断されたくないのだろう。
今度は、白猫ルクスを使い魔に持つマコトに電話をかけてみる。
こちらは、しばらくしてからだったが、受話器が乱暴に上がる音がした。
「もしもし! マコトお姉様!?」
「カナ?
悪い。ちょっと、今忙しいから――」
「謹慎明けに魔法女学校へ行くって話、本当なのですか!?」
「……」
「お姉様!?」
「ルクスから詳しく聞いていないのかい?」
「いいえ、リンから聞きました」
「……だからか。
わかった。
詳細を聞いていないんだね?」
「はい、お姉様」
「実は、僕たち……騙されていたんだよ」
「騙され――て?」
「謹慎が明けたら元の学校へ通う、というのは、最初からなかったってこと。
教育委員会側は『元の学校へ通うとは一言も言っていない』の一点張りさ」
「そんなっ!」
「『元の学校へ通う』というのは、こっちの思い込みだったわけ。
向こうは『聞かれなかったから答えなかった』と」
「そんなの、あんまりだと思います!」
「まあ、とにかく、謹慎明けの10日から、僕たち全員が国立ヴァルトトイフェル魔法女学校に通うことになったから。
いいね?」
「どうして、その学校に行くのですか!?」
「それは……」
「それは?」
「…………あそこは…………魔法で事件を起こした問題児が通う学校……だから」
その言葉に頭を小突かれたカナは、蹌踉めいた。
胸の奥から、熱い何かが突き上げてくる。
それに耐えきれず、再び涙が溢れ出て、頬を、顎を濡らしていく。
「カナ?」
嗚咽が止まらないカナは、マコトの問いかけには答えず、テーブルにうつ伏した。




