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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会
12/188

12.ナディアとスヴェトラーナ

 その後、カナはナディアとしばらく、身の上話をした。


 打ち解け合うと、お互いの本音も出るようになる。


 悩みも打ち明けたくなる。



 本音をさらけ出したときの爽快感。


 しきりに頷くナディアの表情から感じる安心感。


 先ほどまでのカナの不安な気持ちは、いつしか薄れていった。



 カナは、一般人も含めて友達は多い方だが、こうやって本音を言い合う相手は、家族以外で始めてだった。



 年上の友人なんて、今までいない。


 しかも、外国人だなんて。


 カナは今初めて、国境を越えて、かけがえのない親友を得た気持ちになり、涙が出そうになった。



 ナディアとスヴェトラーナは、ルシー王国の魔法使いが集められた、とある施設の出身らしい。


 そこには、親がいなくて、魔法が使える十八歳以下の少年少女だけが寝泊まりしている。


 国からの補助は乏しく、暮らしが貧しいので、働ける者が給与を施設に入れているとのこと。



 二人は、その施設の筆頭の実力者。


 今回の魔法少女世界選手権大会の賞金は、準決勝に進んだ四位まで出る。


 もちろん、二人が狙うは優勝と準優勝。


 そうでなくても四位までには入りたい。



 今回出場を拒否した世界一と言われる魔法少女がいるので、四位に入れば世界五大魔法少女として有名になり、テレビにも出演できる。


 そうして得たお金を、全額施設に寄付して、今まで育ててくれた施設に恩返しがしたい。


 夢を語るナディアの目は、輝いていた。



 それだけ聞くとお金にしか興味がないようにも思えてくるが、ナディアの違うところは、そのような背負う物がありながら、選手権を楽しむと言い切るところ。



「だって、背負う重圧が気になって、普段通りに動けなくなるわ。

 人間って、いろいろな感情が筋肉の動きを束縛するの。

 それって、魔法も同じよね?」


「ええ、そうね」


「詠唱に乱れが生じ、術式がうまく展開できず、事象の改変がきちんと出来ない。

 それが、見た目には魔法が失敗したように見える。

 経験あるでしょう?」


「もちろん」


「だから、悔いがないように、思いっきりやるの。

 それには、楽しいという感情が必要なの。

 最高のコンディションで、束縛がゼロの状態で、詠唱する。

 きっとうまくいくわ」


「うん」


「幸運も引き寄せることができるはずよ。

 私はもう駄目だと諦める人のところには、絶対に幸運は来ないから。

 だって、諦めたのでしょう? 来なくて当然よ」


「そうね。

 ナディアの話を聞いていると、私、この選手権が楽しくなってきた。

 うまく出来る気がしてきた」


「でしょう! でしょう!

 そうだ。スヴェをここに呼んでくるわ。一緒に話をしましょう!

 対戦相手だけど、いいわよね!?」


「ええ、喜んで」



 それから、ナディアは更衣室を走って出て行った。



 ところが、いつまで経っても彼女は戻ってこない。


 スヴェトラーナが恥ずかしがっているのか、顔合わせに反対したのか。



 それとも、何か自分が気に障ることでも言ったのだろうか。


 生意気なことでも言ったのだろうか。


 カナは、気が気ではなかった。



 結局、カナは一人のまま、更衣室の置物状態になっていた。


 しばらくして、館内放送で選手の集合が指示される。


 沈み込んだ顔のカナは、肩を落として更衣室を出た。


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