107.鎖で捕らわれた魔女
「イツキ・クノツギ。
あなたは、宝玉をすでに取り返しましたね?
そして、炎竜を封印しようとしていますね? 今この場で」
カトリーンが、偽審判員――十一姫の企てをズバリと言い当てた。
しかし、当の十一姫は、涼しい顔をしている。
「あら。どうして、そうなりますの?」
「理由は簡単。
魔物を召喚して、カナ・ハチジョウを取り囲んでいるから」
「魔物じゃなくて、式神ですけれど」
「それは失礼。
カナ・ハチジョウを狙う理由は、一つしかないわ。
それは炎竜の覚醒のため」
「そうとは限らないのでは?」
「いいえ。あなたの場合は、それしかありません」
「どうして断言できるのかしら?」
「7月に炎竜の話をしたとき、宝玉は盗まれたとおっしゃいましたが、すぐに嘘とわかりました」
「それは、なぜ?」
「私は、人の心が読めます」
「……っ!」
「今、その宝玉が手元にあるはずです。
なにせ、覚醒に成功したら、封印しないといけないので」
「それで?」
「審判員マイコ・ハチジョウになりすまして、この場に現れた。
それは、間近にいないと封印できないから」
十一姫は、鼻でフンと笑う。
「さすがは才女。
名探偵の真似も出来るのね」
「これでも、ヘルヴェティア王国保安警察にも顔を出していますから」
「単に、お飾りの全権代表じゃないのね」
「当然です」
「――だったら、どうするの?」
「あなたを排除します」
「フフフ。どうやって?」
「こうやって」
カトリーンが右手を挙げて、パチンと指を鳴らした。
すると、十一姫の足下から、5本の黒い鎖がボコボコと音を立てて現れる。
たちまち、それらは彼女の手足、胸、腰に堅く巻き付いた。