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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会
102/188

102.奪われた宝玉

「炎竜の方は、覚醒しなかったみたいだけど?」


 マイコの言葉に、カナの心臓がズキンと跳ね上がる。


「だ、大丈夫……でした」


 力なく答えるカナの顔を、マイコはジッと覗き込む。


「本当に?」


「……ええ」


 今度は口ごもる娘の表情を、母親は穴の開くほど見つめる。


「そう」


「はい。お母様」


「そういえば、リンは?」


「えっ?」



 カナは、周囲を見渡す。

 マイコの結界の中には、見当たらない。



「どこに行ったか、知らないの?」


「宝玉をイズミ――あのお方(ヽヽヽヽ)に盗まれないように、くわえて逃げました」


「この結界の外には、いない?」



 カナは、霧の向こうに見えるものをつぶさに観察しながら、パノラマ動画撮影でもしているかのように、少しずつ体を回転させていく。



「いえ、見えないようです……」



 そう答えるも、上を見ていないことに気づいたカナは、空を見上げた。


 すると、頭から10メートルほど上に、リンが静止しているのが見えた。



「あっ! お母様!

 リンは、上にいます!」



 マイコは、空を仰いで確認し、笑みを浮かべた。


 その後、マイコは姿を消し、同時に結界も解除した。



 カナの周辺で、一斉に時間が回り出す。


 揺れる旗。


 入り乱れる声援と野次。



 カナは、宙に浮くリンよりも、イズミが動いていないのかが気になった。


 まだ彼女は、気絶したままだ。



 憑依する(くのつぎ)一姫(いつき)を追い出すためとはいえ、自分の雷撃魔法が強すぎたことに後悔する。


 まだ十分に手加減出来ないのが、悪い癖。


 それが、今になって悔やまれる。



 審判員は、少しおぼつかない足取りで、気絶しているイズミの所へ歩み寄った。


 多くの観客が、「動きが遅すぎる」と抗議するも、聞き入れない。


 彼女なりのゆっくりした10(テン)カウントで、カナの勝利が確定した。



「ウオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」


「カ・ア・ナ!! カ・ア・ナ!! カ・ア・ナ!!」



 体がビリビリするほどの大歓声に包まれたカナは、観客に笑顔で応えるよりも先に、イズミの所へ駆け寄ることを決意する。


 そうして、足を踏み出した途端、目の前を黒い塊が落下した。



 ギョッとしたカナは、足下を見る。


 緑の芝の上に横たわっているのは、黒猫リンだ。



「リン! どうしたの!?」


 カナは、しゃがんでリンを抱き寄せた。


10(テン)カウントを上から見ていたら、カラスの群れに襲われたの」

「カラス?」


「あれは式神たちね。

 魔力の塊みたいな、強力な奴らよ」


「大丈夫?」


「全然、大丈夫じゃない」


「怪我しているの!?」


「ううん、そう意味じゃなくて。

 あたしがしゃべっているから、気づかない?」


「えーと……」


「あんた、鈍いわね。

 奪われたわよ、宝玉が」


「えっ!?」



 カナは、リンが宝玉をくわえているとき、フガフガとしか声が出なかったことを、今更ながら思い出した。



 あのお方(ヽヽヽヽ)が式神を使って、宝玉を奪還したのだ。



 カナは、会場をぐるりと見渡す。



「このどこかに、必ずいる!

 間違いない!」


「でも、こうも多すぎるとねぇ……」


「リン。あのお方(ヽヽヽヽ)を見つけ出して、宝玉を奪還するわよ。

 あれに炎竜が封印されて、悪用されかねないし」


「おー、よく言ったわね。

 頼もしいじゃない」


「えへへ」


「あんたは、試合ごとに強くなっていく。

 精神力がね。

 見ていて、こっちまでワクワクしてくるわよ」


「ありがとう」


「お礼は、ミッションコンプリートしたときに。

 さあ、行くわよ!」



 リンの言葉に励まされ、カナは力強く立ち上がった。


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