101.卑劣な魔女殺し
「何がおかしいの?」
「その得意そうな顔がよ」
「言わせておけば――」
「待って。一応は、褒めておくわ。
さすがは、蜂乗マイコ!
よく見破ったわね。
……それにしても、迂闊だったわ。
アンドロイドのスタッフたちの中に紛れ込めば、バレないと思ったのに」
「体をあそこに残したのも、迂闊だったわね」
「ええ、そう――かもね。
……ということは、当然、体を手錠とか縄で縛り上げているのよね?」
「もちろんよ。
さあ、その審判員から離れて、ベンチの向こうの元の体に戻りなさい!」
「いやよ」
「戻りなさい!」
「お生憎様。
こうすれば、もう戻れないわ」
「何をするの?」
「ただ、こうするだけ」
審判員は、右手の指をパチンと鳴らした。
「まさか!?
戻る体を――燃やした!?」
「さすがは、世界三大魔女。
指を鳴らしただけで、私の発動した魔法を見破るなんて」
「燃やしたら、元には戻れないじゃない!
……待って!
もしかして、あの体は!?」
「そうよ。用済みの体よ」
「ということは、自分のじゃない!」
「もちろん。
燃やしても、なーんにも問題ないわよ」
「じゃあ、あの魔女は誰!?」
「イズミの両親に闇魔法をかける時に、はぐれ魔女を演じたのだけれど、あれはその時に憑依した体よ。
元は、どこぞの、はぐれ魔女。
そいつを今回、アンドロイドそっくりに変装させたの。
後で匂いをつけ、囮を演じさせたわけ」
「なら、本体は別に!?」
「当たり前でしょう? こうなることも想定していたのだから」
「なんという卑劣!」
「いいじゃない。
あいつ、魔法で窃盗を繰り返していたのだから。
私が今回、天罰を下して灰にしたというわけ。
感謝しなさいよね。
じゃあ、さようなら」
そう言い終わった審判員は、へなへなと座り込んで、後ろ向きに倒れた。
マイコが審判員を介抱していると、結界の中に一筋の黒い煙が入り込んできた。
その煙が大型犬の形になる。
マイコの使い魔のハウプトマンだ。
『縛っていたアンドロイドが、突然、燃えて黒焦げになった』
ハウプトマンの報告に、マイコはため息をつく。
「あれは、囮にされていた魔女よ。
用済みで燃やされたの」
『むごいことをする』
「十一姫は、残酷な手口で悪い魔女を処罰して、いいことをしたと思っている。
何としてでも止めないと」
とその時、マイコがカナの方を振り向いた。