ドルヒ視点 二人目の末路
エデルトルートは正気を取り戻してすぐに、村上君が持っていた短剣を拾い上げて、しぐれの頭を刺した。
「死んじゃえ」
何度も、何度も。
「死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ」
しかしレベル差がありすぎるせいか、何度刺しても傷一つ付けることはできなかったが百回ほど刺したころに武器の性能か、ようやくしぐれの顔に傷がついてきた。
足元がゲロまみれだけど。
「やめよ、エデルトルート」
私は強い口調で止めた。彼女にこんなことをさせちゃいけない。
「そいつは吾輩の獲物だ」
私は貫手を作ってまずは指を切断した。
「ぐげげ」
交尾中のカエルが泣き叫ぶみたいな悲鳴が聞こえてくる。まだ精神は幻覚の中にいるはずなのに痛みは感じるのか。
それから少しずつ少しずつ手首、肘、肩とハムみたいに切断する。
これでクラフトを使うことはできない。いよいよ本番だ。
腹をかっさばき、正中線に沿って手刀を入れた後に腹膜をひっぺはがす。
胃や肝臓、腸と言った有名なはらわたが露わになった。
それから内臓をかきわけて、子宮が見えてくる。
「子宮ってこうなってるのか」
この中にオークやゴブリンの子供でも入れて、赤頭巾と狼の童話みたいに腹を縫い合わせてやったらどうなるだろうか? 腹を食い破って出てくるのかな?
そう思って腸を切り刻むと、未消化の糞がまじってて臭い。思わず顔をしかめた。
だがエデルトルートは糞越しにでも短剣を突き立ててさらにバラバラに分解していった。レベル差があっても内臓は傷つけられるらしい。
「何をしているのだ?」
「ムラさんを傷つけた人は原形すらとどめるべきじゃないんです。生まれ変わることもでいないように徹底的に分解するべきです」
それから私はエデルトルートと共に醜悪な糞女を徹底的に分解していった。
髪の毛も、脳味噌も、皮膚も、長い小腸も。消化器を分解する時は喉と肛門で繋がっている部分を切断して一旦取り出すと楽に分解できた。
最後に体を細かく切り刻んで、土を深く掘り埋めた。
これであの醜悪な女も、この美しい木々の糧となり生き続ける。
いいことをしたな。
ゲロと血まみれの身体を川で洗い、一息ついていると村上君が起きてきた。
「なにがあったの?」
僕は頭を押さえつつ起き上がる。なんだか頭に靄がかかっているみたいにはっきりしない。クラフトを喰らったんだろうか? ドルヒは大丈夫か?
「ムラさん!」
エデルトルートが地面に座り込んだままの僕に抱きついてくる。柔らかくて、甘いいい匂いがした。ほんのすこし生臭い匂いがするけれど、気にするほどじゃない。
「クラフトを喰らって、それで、それで……心配したんですよ」
嫌な感じがかけらもない、澄み切った感じ。心から僕を心配しているのが伝わってくる。
きっと彼女は、悪いことなんて何一つせずに育ってきたんだろう。
ドルヒもすっきりした顔で立っていた。
「一人、倒した」
彼女はそれだけを告げた。復讐で多くを語らない、いつも通りのドルヒで安心した。




