ドルヒ視点 夢
「う、うげええ」
しぐれはいきなり地面に突っ伏して、吐き始めた。一方さっきのオ―ブの力で村上君も動かなくなったけれど、安らかな顔で地面に伏せているだけだ。楽しくて安心する夢を見ているのだろう。
そう思っている間にもしぐれはゲロを次から次へと吐き続ける。
汚いな。
「この美しい大地を貴様の嘔吐物で穢すな」
私はしぐれを蹴飛ばして無理やり仰向けにする。口から吐いたものがいくらか喉の奥に逆流して、むせ込んだ。
「邪魔しないでー。私がやってるところだから」
エデルトルートもどきは嬉々としてしぐれが吐くところを楽しんでいるようだった。
同じ相手を違う方法で苦しめるのもなかなか乙なものだね、しばらく見学していよう。
私はスカートの裾を丁寧に折りたたんでから手近な岩に腰かけた。
「や、やめて、そんな汚いものいれないで」
「いやだあ、あんたみたいなキモいおっさんなんかに」
ゲロを吐きながら何事か呻いている。会話の内容からどんな幻を見せられているかは大体予測がつくけれどどうやら私がされそうになったことを幻の中でさせられているらしい。
ああ、すっきりする。恍惚とした気分ってこういうことを言うのか。
自分がさせられたこと、させられそうになって嫌だったことをいじめた相手が味わっているのを見るのは最高だな。
私は胸が暖かくなってきたので、さらさらの朱子織のドレスの上から胸を押さえる。以前より大分膨らんだ胸の感触を感じた。
「いやだ、いやだ、いやだあ」
しぐれはゲロの中で転げ回るものだからゲロが飛び散って汚いことこの上ない。おまけに泣き叫ぶものだから顔が鼻水でヨダレと涙でえらいことになっている。
まあ内面にふさわしい見た目になってきたけどね。けばけばしい化粧が大分はがれて醜い素肌が露わになってるし。
「そろそろかな。後はエデルトルートと君に任せるよ」
その言葉を最後にエデルトルートもどきから生えていた尻尾や角が引っ込んだ。




