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『マン・ハンティング~異世界でクラスメイトへ復讐する』  作者:
ドルヒ編

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気持ちの差

久しぶりの投稿になります。一応プロットと、抜粋シーンはだいぶできているのですが投稿用の作品と本業に忙しく、なかなか更新できなかったことをお詫びいたします。

おかげさまでなろうにも掲載している拙作「故郷を追放された~」はHJ文庫二次選考を通過しました。

「ドルヒ、何を考えているの?」

ドルヒは答えない。

 また僕を殺して経験値にしようと思ったんだろうか。

 テルマに矢を刺させて、とどめに僕を…… まあ、それもいいか。

 これも因果応報というやつだろう。

 安らかな気持ちになって目をつぶる。

 墨で塗りつぶしたような暗闇の中にふとヒロイーゼさんやエデルトルートの顔が思い浮かんできた。

僕が死んだら泣くかな、と少しだけ死ぬのが嫌な気持ちになった。

「死ね、お姉ちゃんの仇!」

 テルマの手から矢が放たれるのが音でわかる。ああ、これは幻覚じゃない。エデルトルートの能力じゃなくて、本物の矢だ。

 それがまっすぐ飛んでくるのが目をつむっていてもわかる。

 光のささないトンネルの様な暗闇に、音だけがある。

 ヒロイーゼさん、エデルトルート、みんな……



「死ね」 

 だが突然音が消えた。

 くぐもったような悲鳴と、体重の軽い人間が地面に倒れる音、それに新しい血の臭いが死へと続くはずだったトンネルに光をもたらした。

 目を開ける。光がトンネルに差しこみ、ドルヒに胸を貫かれたテルマが倒れていた。クラフトの弓矢も消えかかっている。


「な、なんで……」

 テルマは地面にうつ伏せに倒れながらも、手を動かしていた。だがその手は虚しく空を切るばかりでクラフトをつかめてはいない。

「相棒は吾輩の復讐を手伝ってくれる。その邪魔をするならば、幼子とて吾輩は手にかける」

 ドルヒは曇天の日の海の色のように濁りきった目でそう言い捨てた。

「神様のこと、話せたのに……」

「神を嫌う人間もいるだろう? はっきりいってあいつは適当に力を与えて、人を戦わせて楽しんでいるようにしか見えぬ」

「私のお姉ちゃんが、何で殺されないといけなかったんですか。何をしたっていうんですか」

「何もしていない。それがどうかしたか。吾輩は何もしていなくても売春を強制させられ、糞尿を浴びせられ、体を焼かれた。それに比べれば貴様の姉は一時的にせよ命を助けられたであろう、感謝するべきだ」

 ドルヒはとどめとばかりに手刀を振りかぶり、テルマの白いうなじを目がけて振り下ろす。

 僕が以前桜井の首をはねた時と同じように、断面から鮮血が飛び散り、その勢いで首が飛んで行った。

 きりえの8割くらいの経験値が手に入った。


 サッカーボールのように転がったテルマの首を、ドルヒは虚ろな表情で見つめていた。

「吾輩は幼子まで手にかけた。吾輩を怖いと思うか?」

 僕は肯定も否定もせずにドルヒの話を聞いていた。

「だが、まだ足りぬのだ。きりえにすらあれほど苦戦した。あのままでは他の二人には勝てぬだろう、と言うことを肌で感じた。だから目の前の経験値をゲットした」

 僕は話題を変えることにした。

「さっきこの子の気持ちもわかる、って僕が言ったときに笑ったからびっくりしたよ」

「ああ。貴様が鬼畜生でなくて嬉しかったのだ。だから貴様を助けたいと思う気持ちは一層強くなった。もしあのセリフがなくば、この幼子と貴様を二人まとめて経験値にしていたかもしれぬ」

「ありがとう、ドルヒ」

 人を殺した後だというのに、妙な会話だけど。

 これが復讐というものなのだろう。

 それにテルマに対する態度の差は、復讐をまだ果たしていないドルヒと、復讐を既に果たした僕の差だろうな。

 無関係な人を殺した後に色々と考えるのは仕方のないことだ。特にドルヒは元々すごく優しい子みたいだし、その傾向も人一倍強いだろう。

 だから、見守っていよう。

 余計なことは言わずに。

 勝手に気持ちを想像されてあれこれ言われるのは、不愉快だし。


 自称神様はその様子を上から見ていた。姿を見えなくして、決して攻撃されることのない安全地帯から、忍び笑いを漏らしながら見ていた。

「あの子もあっさりやられちゃったな~。まあ、経験のない子にいきなり高レベルをつけても持て余すだけってことか。でも色々と面白いものが見られたよ」

 人の生き死にを面白い、の一言で片づけて自称神様はまた眠りについた。


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