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『マン・ハンティング~異世界でクラスメイトへ復讐する』  作者:
ドルヒ編

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フラグ

 そう思っていると、マジでフラグが立った。

 上空を飛んでいたドラゴンに対し、青空に一筋の線を描くように矢が飛んできて、線がドラゴンの頭部と交差する。

交差した点から朱色のインクのような血が青空に飛び散る。

頭蓋ごと目を貫いた矢は陸に上がった小魚が跳ねるように頭蓋の中で揺れると、目の一部を撒き散らしながら頭部から抜けた。

ふたたび空に舞い上がると今度は反対の目を貫き、更に翼の付け根を貫いた。

 鴉の様な、鷹の様な悲鳴を上げてドラゴンがもがいた。

「ドラッヘちゃん!」

 きりえが絹を切り裂いたような声を上げた。

 いい声だな。僕はきりえの声に対しはじめて快の感情を抱いた。

 ドラゴンはさすがに一気に墜落したりはしなかった。

きりえが鞭を振るって体勢を立て直そうとするが、ドラゴンは着陸する飛行機のように、ゆっくりと高度を下げていく。

 翼の羽ばたきも徐々に力強さを失っていった。

「あれは、誰のクラフト?」

「いや、吾輩も始めて見る。だが今はそんなことを気にしている場合ではない」

 ドルヒは目元を受験に受かった中学生みたいに緩ませた。

「今しかないぞ、相棒。殺そうか」

 僕らはドラゴンが飛んでいく方向に走って先回りする。もはやドラゴンは下から見上げていても覇気がない。炎の滝を吐いてくるそぶりすら見せなかった。

 数分という時間をかけ、とうとうドラゴンは墜落した。

 森の木々を巻き込み、なぎ倒しながら地面を滑る。

 なぎ倒された木々は幹や枝を折られ、土は根や根元の小動物ごと掘り返され、森に大きな傷跡を残していた。

 この美しい森を汚すなんて、許せないな。

 しかし間近で見るとドラゴンの大きさがよくわかる。ドラゴンにしては小型だろうが、それでもちょっとした軽トラック並みの大きさがあった。

 見惚れるのは後だ。とりあえず、殺そう。

 墜落に巻き込まれ、きりえはドラゴンの上で呻いていた。

 土埃にまみれて服は泥だらけになり、衝撃が全身にダメージを与えたのか立つことすらできずにドラゴンの背中に抱きつくようにして呻いている。

 手放してしまった鞭が地面に転がっていた。

 そんなきりえをドルヒは心底満たされた表情で見下しながら笑っている。

「気持が良い。思い知ったか、きりえ」

「泥にまみれて、大切な物を失った。碌に立つことすらできぬ。吾輩の気持ちの百分の一程度は味わえたであろう」

 きりえは呻いたまま、辛うじて声を絞り出す。

「なんデ…… 私のペットが…… 私たち意外の他人なんテ、みんな私のペットの餌になれれば幸せなのニ」

 鞭を握っていた手を、ドルヒは踏みつぶした。

「ゥギャああ」

 きりえが、交尾中のカエルが潰れたような声を出す。

 潰れた手から白い骨が飛び出し、地面を赤黒い静脈血と鮮やかな動脈血で真っ赤に染めた。

「とことん、腹が立つ雌豚だな」

 更に反対の手を手刀で斬り落とす。

「ウギええ」

 今度はドブネズミが踏みつぶされた時の様な声を出した。

「喘げ、叫べ、もがけ」

 ドルヒはそれを繰り返し、きりえを解体していく。手が、足が、腹が、潰れ、あるいは切り裂かれていく。

きりえが骨が突き出た血の塊になった辺りでドルヒはようやく手を止めた。

「相棒…… この雌豚が死んだぞ。レベルアップだ」

 ドルヒが人間を殺したことで僕にも経験値が手に入った。

 剱田を殺した時以上の経験値、自分がこれまでになく強くなったのを感じた。

「はは、っあは、ははははははははは」

 ドルヒはそれから、気が狂ったように笑いつづけた。

 人の死骸をむさぼる鴉の鳴き声のように気味悪く。

 母親に抱かれて笑う無垢な幼子のように純粋に。

「相棒。憎い相手を殺すとはこれほどまでに気分が晴々とするものなのだな」

 そう呟いた後には、いつも通りのドルヒに戻っていた。


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