あの世
74,75,76話に割り込み投稿してあります。以前殺害した人物の関係者です。
「契約者? ああ、殺しましタ。私たちを粗末に扱いましたからネー」
夕飯の残飯を捨てた、程度の調子で彼女は軽く答えた。
やっぱり、あの世にいるのか。
僕はそれに驚きも怒りも感じなかった。
彼女の行動は当然のことで、別に不思議じゃない。
法律も警察も及ばない状況で力を手に入れれば好き放題やるのが普通だ。
それが人間だ。剱田たちだってそうだった。
「それよりも、その男があなたの契約者ですカ?」
きりえは僕を指さしながら聞いた。
「人を指さすなよ、躾がなってないそばかす女」
僕の悪態にも反応せず、きりえは続ける。
「体売ったんデスカ? 私たちが日本でお勧めしたから、想像しちゃって体が疼いて仕方がナイんデスカ? あんなに怖がってたクセニ」
ドルヒは激昂して言い返そうとするが、僕はそっと肩に手を置いてやさしく言った。
「あんなクソ野郎のいうことなんて聞かなくていいんだよ。だって、ただ殺せばいいんだから」
「そうだな。だが相棒、クソ野郎は言葉がおかしいぞ。野郎とは男に使う。だから雌豚とでもいい直せ」
「そうだね。雌豚を屠殺してやろう」
「そうだな。そのうえで獣の餌が良い」
僕たちは笑顔で短剣と拳を構え直した。僕は後ろのポケットにそっと、きりえ対策用の道具を仕込む。
「死ねよ、雌豚」




