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『マン・ハンティング~異世界でクラスメイトへ復讐する』  作者:
ドルヒ編

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リハビリ

「ここは……?」

 かんなが目を覚ますと、川沿いの木にくくりつけられていた。

 杖は目の前に置いてあるが、手元にないので勿論クラフトは使えない。

 ドルヒは実体化するとナイフから人の姿になって武器は消えたけれど、彼女は人の姿になっても武器が手元にあるらしい。

「目が覚めたか?」

 ドルヒが木の上からかんなに声をかける。

「これから近くの魔物が貴様を襲いにやってくる。お、もう来たようだ」

 川の上流から日本にいるヒグマを一回り大きくしたような魔物、リーゼ・ベーア(riese bär)が現れた。

「そいつは人喰い熊だ、ちょうど腹をすかせている。特に柔らかい女の肉を好むからな。飢えた熊を助けてやれ」

 ドルヒの言葉にかんなは必死に身をよじるが身を縛るロープはびくともしない。

「それは貴様ごときの力では切れん」

 別の魔物の腹ワタで編んだ特注品だ。気を失っている間に狩ってきて腸だけをロープ代わりにとっておいたのだ。

「なんでこんなことするの? 助けて!」

 ドルヒはそれを聞いて獰猛に笑った。

「復讐だ」

「復讐って…… 私はあなたをいじめたことなんてない」

 縋るような視線を向けてくるかんなに対して、ドルヒは吐き捨てた。

「いじめは見て見ぬふりをしていた人間も同罪だ」

「そう言う人間ばかりだからいじめられて自殺する者が後を絶たぬ。手始めに貴様から罰を与える」

 そう言われてかんなはがっくりとうなだれる。絶望したみたいだけど、早すぎるぞ。コカトリスに喰われながらもあきらめなかった僕からすれば。

 というか、クラフトを使って逃げるくらいしろよ。

 だが次のドルヒの言葉に、目に光を取りもどした。

「無論吾輩は鬼ではない。条件次第では助けてやらんこともない」

 ドルヒはそう言いながらもう一頭、近付いてきたリーゼ・ベアーに小石を投げた。

 リーゼ・ベーアは頭部に小石が食い込んで…… いや貫通し、反対側の頭から今投げた小石が飛び出た。その勢いのまま川面に飛んでいき、河原に爆発音のような大音量を響かせる。

「吾輩にとっては熊などこんなものだからな」

 ドルヒが熊を瞬殺したところを目の当たりにして、目に光が宿った。

 ムカつくな…… 絶望するのもすがるのも早すぎる。

 こんな風に長いものには巻かれろでずっと生きてきたんじゃないだろうか?

「貴様が吾輩を助けてくれた回数と同じだけ貴様を助けてやる。吾輩が糞尿を浴びせられ、教室で制服を切り裂かれ、煙草の火を押し付けられ、プールの時間水着に穴をあけられ、それらをかばってくれた回数だけ助けてやる」 

 かんなは必死に記憶を探るようにそわそわし、目を泳がせ、またがっくりとうなだれた。

「一度も助けてくれなかったな? では今助けられなくても文句は言えないな。見捨てられる気分はどうだ? 見殺しにされる気分は? 助けてくれるかも、と思った人間が自分に背を向ける気持ちはどうだ?」

 こうまでされてもかんなはまだクラフトを使う様子がない。戦闘向きじゃないのか、それとも使う気力さえないのか。あんな生きる意志が薄弱なやつがよく生き残れたな。

 話している間にリーゼ・ベーアがかんなの足を嗅ぎ、爪を胸のあたりに突き立てた。

 服は切り裂かれ、その下から深紅の鮮血があふれ出てくる。リーゼ・ベーアはそれをうまそうにすすり始めた。

 かんなは悲鳴をあげたらしいが僕は耳をふさいでいたので聞こえなかった。

 この美しい川辺の水音を、人間なんかの悲鳴で穢されたくはない。

 彼にとっては血が前菜というところなのだろうか、口周りの毛が真っ赤に染まった所で心臓にくらいつこうとする。

「だ、だめー!」

 かんなは心臓にくらいつかれる瞬前に叫ぶ。

 感情をあらん限り込めたかのような必死の叫び。魂からの叫びというやつだろうか、さすがのリーゼ・ベーアも動きを一瞬止める。

「私には夢がある! リハビリの仕事をして困ってる人たちを助ける! こんなところで死ねない! だからみなもちゃん、助けて! 今まで助けなかったのは謝る! だからこれからは何でもする!」

 かんなの必死の叫びを聞いて、ドルヒは……


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