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『マン・ハンティング~異世界でクラスメイトへ復讐する』  作者:
ドルヒ編

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???視点 六 ~自称神様~

 私が目を覚ますと、天上も床も四方の壁も真っ白な空間にいた。

 家具も置物も窓もない、四角い箱のような部屋。

 はるか、きりえ、しぐれもいた。みんなトラックにひかれる前と同じ格好で、一体何が起こったのか受け入れかねているように視線を宙に彷徨わせたり、自分の頬をつねったりしている。

 さっきのが悪魔だとすると、ここは地獄だろうか?

 悪魔の力を借りたから魂を奪われたのだろうか。

「ごめ~ん。マジごめ~ん!」

 私が色々と考えていると、急にプラチナブロンドの髪、真っ黒なカラスみたいな羽を背中から生やした綺麗な女の子が現れ、胸の前で手を合わせて謝っていた。

 ものすごい美少女だけど、混乱している相手にその反応はないよねって言いたくなるような軽い口調だ。

 おまけに笑顔がとんでもなくどす黒く感じる。

 いままでひどい目に遭い続けた私の直感が、この女子は信用してはいけないって警報を鳴らした。

 ただ他の三人はそう感じていないようで、はるか、きりえはその美貌に見とれている感じだし、男を食いまくってるしぐれは妬ましそうな視線を向けていた。

「あんた誰~?」

「ここどこですカ?」

「早く戻してじゃん!」

 三人は口々に美少女を糾弾するが、美少女は彼女たちの批判など意に介した様子もない。

「ここは煉獄だよー。天国に行くか地獄に行くか、裁定を待つ人が行く場所。手違いでみんな死んじゃったから、とりあえずここに連れてきた」

「ふざけるな~!」

 はるかが拳を振り上げてその美少女に殴りかかるけど、

「おっと」

 美少女は拳を軽く片手でつかみ、斜めにねじり上げる。彼女の腰がぴくっと動いたかと思うと、はるかの腰が腰砕けになってその場に崩れ落ちた。

「痛っ!」

「悪魔に喧嘩を売るなんて言い度胸だねー。百回くらい殺してあげようかー?」

 腰の力を手に伝えるというやつだろうか? でもはるかのなぎなたの腕は県大会レベルだし、スピードも相当なものだ。

 それをあっさり押さえつけるなんて、彼女は体術も相当なものがあるらしい。はるかが大人しくなったのを確認してから、彼女は手を放した。

 力の差を見せつけられて、はるかたちは大人しく話を聞く体勢を整える。

「お詫びと言ってはなんだけど、みんなに臨む力を一つだけ与えて生まれ変わらせてあげる」

「そんなことが可能なの……?」

「神の奇跡なんて、今どき、流行らないデス」

「マジマジ。マジ可能。だって私、神様だし―」

 さっきは悪魔だって言っていたのに…… というかこの自称神様、さっきから私の方をまるっきり見ていないな。

「神って……」

 そう聞いたとたんに三人の視線が更に胡乱なものを見るような目つきに変わった。

「奇跡を見せないと神様を信じないのは今も昔も変わらないねー。一つだけ私の力を見せてア・ゲ・ル」

 自称神様の目が黄色く光る。

 同時に、私たち四人が犬、猫、ネズミ、蛇の姿に変わった。

 もちろん私は一番弱いネズミだ。

 手足の感覚がまるっきり変わって、上手く動かせない。毛の生えた長い尻尾がすごく重いせいで、四本足で立っているのにもかかわらずバランスがすごく悪い。

 他の三人もその場で倒れたり、腹を見せるように転がったり、蛇に至っては自分で自分の尾を噛んでいた。

 四者四様の鳴き声が白い空間に響き渡る。

「そろそろ戻してあげるねー」

 自称神様の瞳の色が元に戻ると、私たちも元に戻った。

「とりあえず、信じる気になった?」

 はるかたちは若干青ざめた顔でこくこくと首を縦に振る。

 私も取り敢えず軽く頷いておいた。

「私は……」

 はるかが武道家らしく綺麗にまっすぐに手を上げる。

「あなたに負けないくらい強くなりたい」

 普段の間延びした声でなく、きっぱりと断言した。

「そんなんでいいのー?」

「もちろん~。あんなに無様に負けたのは初めてだから~、それに負けないくらいの力が欲しい」

「なるほど。神様の私と同等なのは無理だけどー、あなたの得意ななぎなた? の扱いをもっと強くしてあげるー」

 自称神様の目が再び黄色く輝く。同時に同色の光がはるかを包み、ゆっくりと消えた。

「すごい…… 力がみなぎってくる~! これなら全国にだって行けそう~」

「全国レベルじゃないよ―。あなたの今の力なら試合用のなぎなたで岩が割れちゃうから」

 自称神様が苦笑しながら言った。

「あなたはー?」

「私は…… 動物たちともっと仲良くなりたいデス。飼育小屋では懐かない動物もいましタから。どんな動物とでも仲良くなって、私のお願いを聞かせられる力が欲しいデス」

 一見可憐で純粋な願い事だけど、私の方を口元を歪めながら言っているので糞尿浴びせる以上のことをしてきそうだ。

 同様に自称神様の目が黄色く輝き、きりえの体は同色の光に包まれた。

「じゃあ次は、あなたー」

「私は、もっとかわいくなりたいじゃん。世界中のすべての男がひれ伏して、私の言うこと聞くくらいに。というか、あんたそんなにかわいいのが生意気じゃん。あなたよりかわいくなりたいじゃん」

「了解―」

 しぐれの体も同色の光に包まれる。顔の形は変わっていないけれど、にじみ出る色気がぐっと増したようだ。

「フェロモンをつけ足しておいたからー、たいがいの男は出会っただけであなたの虜だよー。じゃあ、最後はあなただねー」

 自称神様は、私の方をやっと向いた。


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