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『マン・ハンティング~異世界でクラスメイトへ復讐する』  作者:
ドルヒ編

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???視点 弐 ~シャワー~

「ふう……」

 シャワーの水滴が、私の体をぱちぱちと叩いていく。

 石鹸とシャンプーの香りが、尿まみれだった私の体の臭いを中和していく。

 学校に備え付けのシャワーで、私は体を洗っていた。汚された制服は匂いが漏れないようにビニールに密閉して鞄に入れてある。

いじめを受けるようになってから制服を汚されることも多くなったので、替えの制服は常備してあった。

 鏡で自分の体を見てみた。

髪が水に濡れ、体にぴったりと張り付いている。幸い肌にはシミもくすみもなく、真っ白だ。人並みに成長した胸は突起が淡いサクランボ色だし、誰も受け入れたことのない秘所は慎ましい。

 女子同士でシャワーを浴びていたら色々話すこともあったんだろうけど、体の成長度合いをからかったり羨ましがったりするんだろうけど、私は一人だ。それに今自分の体を見ても何の感慨もわかない。

 このごろ、苦しい以外の感情を強く感じることがなくなってきた気がする。

私がいじめにあっても、誰も助けてくれなかった。いじめてないクラスメイトも見てるだけ。

それどころか私を傍観し、影で可哀そうだなんて偽善的なセリフを言ったり、あの三人に合わせて私の悪口を言ったりする。

恥ずかしいけど、匿名で相談したりしてみた。ネットの質問箱とか使ったり、行政の相談サービスとかも使用したりして。

でも有効なアドバイスなんて一つもない。

それはそうだ、結局他人ごとなのだから。

親も、教師も見て見ぬふり。

親は仕事の話ばかり。

教師は平穏無事に仕事を終えることだけが頭にあって、クラス内のトラブルなんて私のこと以外でも一切介入しない。

私がどんなにつらそうな顔をしていても、気にかけてくれる人なんてこの世に一人もいない。

普通に過ごしている人間が憎い。

幸せそうな顔をしているやつらが憎い。

人間なんて大嫌いだ。

「それでさー、手の内がね……」

 この世で一番聞きたくない声がシャワー室の外から聞こえてきた。

 はるかが部活を終えて、シャワー室に入ってきたらしい。

 まずい。

「はるかは相変わらずエースですね、羨ましいデス」

「勉強もスポーツもできるなんて、チートじゃん」

 しかもはるかだけじゃない。

 シャワー室は通路との仕切りに隙間があって、外から足と顔が見えるようになっているから私がここにいることがばれてしまう。

 どんな因縁をつけられるかわからない。

 私は廊下に背を向けた。

 気付かないで。

 早く、通り過ぎて。

 一歩、一歩と足音が近づくたびに心臓が早鐘を打つ。

 いもしない神様に祈る。どうか彼女たちと会わせないでください、会わないで済みますように、と。

 やがて足音が止まった。

 私のいる場所の、手前で。

「みなもちゃ~ん」

 一人が断りもなく仕切りを開いて、シャワー室に入ってきた。

 私は咄嗟に自分の体を抱いて隠せるだけ隠す。

 無駄な抵抗だとは思うけれど……

「へえ、あんた結構いい体してるじゃん」

 私の体をなめまわすように見ながら、時津しぐれが厭らしい笑みを浮かべた。化粧も派手で髪も校則ギリギリの色まで染めてギャルっぽい子で、彼氏が何人もいるとか、とっかえひっかえしてるとか、あまりいい噂は聞かない。

 彼女たちは三人で私の体を散々に弄んだ後、しぐれが上気した顔でぽんと手を叩いた。

「いいこと思いついた!」

 彼女の満面の笑みとは裏腹に、私はすごく嫌な予感しかしない。


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