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清美視点 女心

以前小説賞の総評でで清美の豹変ぶりに違和感がある、と言われたので清美視点を挿入します。

 村上君を残してきた村の方が気になって、何度も振り返った。

「おいキヨ、何を気にしてる?」

 剱田君がいつの間にか私の傍に立って、肩に手をまわしていた。

 鎧が当たって痛いんだけど、彼はそれを気にした風もない。いつの間にか私に「キヨ」というあだ名をつけて呼んでいる。一番親しい村上君でさえ名字で呼んでいるのになれなれしいと思う。

 だけど、その強引な距離の詰め方が頼もしく思える時もある。

 村上君は決してこんな風にしないから。

「あの役立たずが気になっていやがるのか?」

 せせら笑うような言い方に、さすがにカチンときた。

「村上君は、役立たずなんかじゃ……」

「かばいたくなる気持ちはわかる。ダチだからな」

 ダチ、つまり友達。友情を感じているから、かばう。

 彼に抱いている感情が友情といわれて否定したくなったけど、言い返せない。

「だが役立たずだな。考えてみろ。魔物にはやられるだけ、クラフトも持ってねえ、やることといえば村人と交流してるだけ」

 ひどいと思うけど、その通りだと思う。

 魔物になすすべなくやられている村上君を見て、私を護ってくれるのかなと不安に感じたのも事実だ。

「でも村人と一番仲良くしているのは村上君だし……」

 私は胸のロザリオを握り締めながら必死にかばう。

「その役目はお前がやった方がいいんじゃね? クラフトで傷を治せるお前と、仲良しごっこしかできねえあいつ、どっちが村人に役立つかなんか一目瞭然だろ」

 私が、村人と交流する役目をすれば。

 そうなれば、村上君はもう必要ない?

 必要ない。

 胸に暗い靄がかかると同時に、カタルシスのような爽快感を感じた。

 もう守らなくてもいい。

 斜め上になんとなく気配を感じて私はそちらに目を向けた。

 学校にいた頃は絶対に気がつけなかったはずだけど、レベルが上がって気配にも敏感になったのだろうか。

 でもすでに私の目の前には鳥型の魔物が迫っていた。

 あと数センチで、私の目は食いちぎられるだろう。

 「もう見切りをつけろ。そうすれば、っと」

 剱田君が私の肩を引き寄せて胸の中にかばい、襲ってきた魔物を一刀両断にした。

「俺が護ってやる」

 剣をかざし、そう言いきる剱田君は今まで見たどんな男の子より格好良くて。

 物語に出てくる、お姫様を助ける王子様そっくりで。

 さっきまで痛くて気持ち悪かった腕を、急に暖かく感じた。

「あ、ありがとう……」

 剱田君…… このまま、抱き締めてもらって、キスしてもらえたら……

 小さなころから少女漫画を読んで、妄想していたシーンがどんどん溢れ出て来る。

 剱田君が少しだけ笑って、呟いた。

「女なんざ、こんなもんだ。強いところ見せつけて、誰が護ってやれるかをわからせて、惚れたら少しだけ引く。それでイチコロだ」

「何か言った、剱田君?」

「お前をどうやったら護れるかを考えてたんだ」

「やっぱり優しいね!」

「おう、だが俺の女になるんなら言葉遣いを改めねえとな」

「言葉遣い? もっとギャルっぽくってこと?」

「そうだ」

 今までのやり方を変えるのは違和感があるけど。

 剱田君に気にいられるためだ、頑張ってみよう。


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