因果応報
復讐がすべて終わった。
今までの死闘や屈辱、迷いに思いをはせる。
でもこれだけは言える。
復讐を遂げたとしても残るのは虚しさだけだ、なんて言葉があるけど実際にやってみてそんなことは全然なかった。復讐して本当に良かった。
でもすっきりしたような虚しいような不思議な気分で、気が抜けたのか何もする気が起きない。とにかくしばらくは休みたかった。
するとドルヒが僕をじっと見つめているのに気がついた。
僕はこれから何をされるのか、なんとなく予測がついた。でもそれに抗おうという気がおきない。全てやりつくしたことで、真っ白に燃え尽きたような感じだ。立っていることすら億劫に感じてきた。
するとドルヒが僕をじっと見つめているのに気がついた。
僕はこれから何をされるのか、なんとなく予測がついた。でもそれに抗おうという気がおきない。全てやりつくしたことで、真っ白に燃え尽きたような感じだ。立っていることすら億劫に感じてきた。何もする気が起きない。
ドルヒはゆっくりと僕に近付いてくる。
まるでこれからピクニックにでも誘うとでも思える穏やかな雰囲気だ。
僕のすぐ近くまで来ると、手をゆっくりと引く。
そのまま腕を伸ばし、指をぴんと張って貫手の形を作る。
それでドルヒは僕の腹を突く。お腹が豆腐になったかと思うくらいにあっさりとドルヒの貫手は僕のお腹を貫通した。
えずくような感触が激痛と共に口から血が溢れだして僕は地面に倒れ伏す。
『避けようとも逃げようともせぬとは…… そんなに吾輩の行動は意外じゃったか?』
「そんなわけないよ」
『まあ当然と言えば当然じゃな。吾輩は人間が嫌いだと常々口にしておったし、貴様は吾輩の力でレベリングしておったのじゃから。かなりの高レベルとなった貴様を殺すことで、吾輩は更にレベルアップできるという寸法じゃな』
「そう、だよね。僕が君の力を利用してたみたいに、君も僕を利用した」
僕は既に立つ力もなく、うつ伏せに倒れていた。腹と口からあふれ出る血が大地にしみ込んでいく。
『うむ。クラスメイトの他にも悪魔はおるし、かつて吾輩を蔑み、見下し地獄に落とした者達へ復讐したい。そのために相棒が必要だった。吾輩を実体化させ、レベリングの糧となる相棒がな。恨むか?』
「そんなわけない。感謝してるよ」
強がりでも負け惜しみでもなく、本心からそう思えた。
痛みが思考を侵食しても、それははっきりと知覚できる。
「君のおかげで復讐が遂げられたし、殺されたことで僕がヴィルマさんみたな無関係の人たちまで殺した罪悪感に苦しむ必要がなくなった。親の次くらいには感謝してるよ」
『そうか』
何の感情も込められていないセリフと共にドルヒは僕の腹から血まみれの手を引きぬいた。飛び散った血がドルヒの処女雪のような頬に赤い染みを作る。汚しちゃったな、と場違いなことを考えた。
その反動で体が跳ねて目の前に生えていた花をつぶしてしまいそうになったので、最後の力を振り絞って腕を動かす。
花は僕の手につぶされることなく、大地に根付いている。ぼくの血を養分にしてたくさんの種をつけることだろう。
『短い間であったが、楽しかったぞ』
そこで僕の意識は暗闇へと落ちていった。




