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『マン・ハンティング~異世界でクラスメイトへ復讐する』  作者:
無力編

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ジャガイモみたい

だが剱田は、僕ではなくドルヒを惚けたように見つめていた。今なら隙だらけだから簡単に殺せそうだけど、あいつの視線が腹立つな。

『相棒、あのデーゲンの持ち主が不細工な目で妾を見ているのがたまらなくおぞましいのじゃが』

 ドルヒは華奢な腕で自分を抱え込むようにして身震いした。

「ぶ、不細工だと…… 俺を不細工呼ばわりしたのはお前が初めてだぜ。決めた、村上を殺した後はお前を清美の奴隷にでもしてやろうかと思ったが村上の目の前でお前を犯してやる」

 なんかエロゲみたいな展開になってきたな。

「そんなことはさせない」

 僕はへっぴり腰で構えた。素手での格闘は専門外だからどうも様にならないな。

「へ、でもナイフがなくなったじゃねえか。素手の喧嘩なんぞ素人同然の貴様に何ができる?」

 獲物を持っていないのですっかりなめきっているようだ。

「っていうかナオくん、恋人の目の前で浮気宣言?」

 清美が不貞腐れていた。

「そうじゃねえよ、こいつの目の前でっていうのがいいんじゃねえか」

「あ、それいいー! 浮気は駄目だけどこの殺人者ひどい目に合わせるのは問題ないから」

 もう何も言う気がなくなった。何も話したくなくなった。

こいつら、クズだな。それだけだったんだ。

 何を言われても聞き流せばよかったんだ。

「……」

「ビビって何も言えねえか。もう一度いってやる。てめえをボロボロにした後、テメエの目の前であの女を犯してやるよ」

 僕が何もしゃべらないでいたせいか、剱田が勝手な勘違いをしている。

「ち○こ切り落とすか」

 僕は呟く。蘇生魔法で体力が回復したのか、剱田が三回目のグロース・アングライフェンを放ってきた。

 凄まじい衝撃波が僕の体を襲う。以前までの僕なら立っていることさえできずに吹き飛ばされていただろう。だけど、

「はいはい」

 僕は蚊を払うように衝撃波を払った。

 一瞬だけ視界が遮られるけれど、視界が晴れた後には僕の足元だけが綺麗に剱田の攻撃前の状態を保ち、周囲は土がむき出しの荒れ放題の地と化した。

「な…… その女がバフでもかけていやがるのか?」

剱田がまた勘違いしたセリフを吐いているけれど、剱田の必殺技なんて今の僕には蚊に刺された程度にも感じない。

 それだけ剱田から得られた経験値が大きかったのだろう。それらしく見せるために手をかざして一応衝撃波をガードしたけど、実際はガードなんて必要なかった。

 そのまま無造作に距離を詰める。

 無拍子、っていうんだろうか。自分でもあまりにさりげない動きで、視界がぶれるほどのスピードが出た。

反応する間もなく懐に入られ、呆然とした剱田の下腹部の鎧を叩き割る。

まるでウエハースみたいに脆くて、金属の破片があちこちに飛び散った。清美の方にも少しだけ飛んでいく。

ここまでされてやっとレベル差を認識できたらしい。改めて剱田の顔に恐怖が浮かび上がるけど、まだまだだ。それを改めて絶望に変えてやらないと。

僕は手を剱田の股間に滑り込ませる。

ばっちいけど剱田に絶望と痛みを与えてやるためだ、我慢しないと。

少しだけ手に力を込めると吐き気がするような嫌悪感が全身を襲う。清美のデバフなんて比べ物にならないな。

そのまま。

腰を入れて、腕を思いきり引っ張った。

剱田の体から一部が切り離される。

格闘スキルがないせいか一連の動きがぎこちないけど、圧倒的なステータス差はそれを補って余りあった。

剱田の股関節から赤黒い物体が離れる。一物が引きちぎられ、血まみれの陰嚢の中にコリコリとした感触があった。

そういえば強姦魔の岩崎のも、こうして切り離せばよかったな。

剱田がこの世の終わりが来たような顔で声にならない悲鳴をあげていた。清美が近付いて治療しようとするけれど、ドルヒが間に立って近寄らせなかった。

 みっともない顔をして泣き叫ぶ剱田の悲鳴が心地いい。これでこいつはスクールカーストの、異世界カーストの頂点から一瞬で転げ落ちた。

 剱田の悲鳴を聞きながら、こいつの犠牲になった人たちに思いをはせる。日本で剱田に殴られて、顔をはらして入試の面接にいけなくなった子、理不尽に絡まれて骨折させられ、スポーツ推薦の枠を逃した子、危篤状態の祖母のお見舞いに行く途中剱田に絡まれて最期を看取れなかった子、剱田の必殺技に巻き込まれて死んでいった村人。

 こいつの嘆きをレクイエムにするから、ゆっくりと堪能してください。

 でもうるさくなってきたからそろそろ黙らせるか。

 足元で無様に転がって苦しむ剱田の頭を適当に踏んづけた。

 トマトが潰れたような、なんてよく言うけど剱田の頭を踏みつぶした時はヒロイーゼさんの店で生のジャガイモをうっかり踏んづけたときの感触に似ていて、真下には髪の毛混じりの赤黒い何かが僕の足元に残っているだけだった。


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