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『マン・ハンティング~異世界でクラスメイトへ復讐する』  作者:
無力編

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斜め前


 今度は剱田も清美を背後にかばいながら僕との斬り合いになる。

 飛び道具を使わないと言ったのは、清美をかばいながら戦うと巻き込んでしまう恐れがあるのも一因のようだ。

 片手に持ったドルヒで剱田を突き、切る。だが剱田の剣に阻まれて一向に深手を与えられないし、かすった程度では清美のパフで塞がってしまう。

 岩崎との戦いで使った戦法は使えそうにない。

 剱田が剣で僕を斬ろうとする。大振りなのでかわしやすいが、かわしきれずに受け止めると手が痺れる。腕力の差に加えて、両手武器と片手武器の差もあるだろう。

 長引くと不利だな……

 僕はやや強引に間合いを詰めて、再び鍔迫り合いに持ち込む。

 剱田の方が単純な脚の速さは上なので、距離を取って回復を待つのも無理だ。一旦攻防を止めて休まないと。

 だが向こうは両手持ちの剣、こっちは片手持ちのナイフなのでじわじわと押しこまれていく。力負けして、体幹がのけぞったので立て直そうとした。

 だがその隙に剱田の前足が僕のみぞおちに飛んできた。心が守りに入っていたのか、かわせない。綺麗に筋肉のついていない箇所に入り、えずき、激痛が走る。はるか後方に吹っ飛ばされ、無様に地面を転がって口の中に土が入った。

「やったあ、クリーンヒットお!」

 清美が片手を掲げて嬉しそうな声を出す。

 あんな声、僕と一緒にいた時に出したことがない。

 清美の笑い声がすごく癪に障った。

 それにしても剣と体術のコンビネーションがうまいな…… 喧嘩慣れしている奴に武器を持たせたらこんな感じになるのか。気狂○に刃物とはよく言ったものだ。

 僕は腹を押さえながら身を起こした。

「け、こんなもんだ。お前なんて弱いやつはグロース・アングライフェンを使わなくても楽勝だ」

 また見下された。悔しい、悔しい、悔しい。

『相棒』

「何、ドルヒ?」

 またお説教だろうか。

『吾輩は相棒を信じておる。デーゲンも、ハイレンもやってくれると。だから冷静になれ。自分を過小評価も過大評価もせず、できることを冷静に見極めろ』

 僕にできること……

「そんなの、これしかないよ」

 僕は痛みを気力で押さえつけ、僕を見下す剱田のもとへ突っ込んだ。

 今度こそ殺してやる。



 僕はクロスレンジでできるあらゆる攻撃を試してみた。剱田の腕を掴んで動きを封じようとしたが、レスリングの腰投げのように体を回転させて逆に投げられてしまった。

 僕も蹴りで対抗してみたが、剱田のように喧嘩慣れしていないからそれも無理で、体が固くて狙ったところまで足が上がらないという始末だった。

 あいつが当たり前のようにできていることが、僕は何一つできていない。

 清美のヤジまで飛んでくる。惨めで、泣きたくなってきた。

 喧嘩の技術は圧倒的にあちらが上。武器の大きさもリーチもあちらが上。だから徐々に押し込まれていっている。傷が増え、血が腕や顔を伝い始めた。

「清美、楽しみにしてろ! もうそろそろこの卑怯者を退治してやるよ!」

「ありがと、ナオくん! 愛してる!」

 僕が死にそうになっている時だけは楽しそうだな。

 なにが癒しの聖母だ、あの偽善者。

 怒りで少し闘志が回復するけど、何の解決にもなっていない。僕ができて剱田にできないのはナイフの扱いと人体の急所の情報くらいだろうか。毒の知識はあるけれど周囲に毒草は生えていない。

 ここから狙える人体の急所は頭部、首筋、手首の裏側、脇くらいだろう。

 鎧を着ているから岩崎の時と比べて狙える箇所がすごく少ない。

 考え込んでいると剱田が僕の心臓目がけて突きを放ってきた。閃光と見間違うほどの鋭い突き。

だが僕はかわすことも払うこともせずに斜め前へ出る。

 さっきと同じ戦法では決して破れない。

 だから慣れていなくても、あえて戦法を変えた。

 初めての動きだからか剱田の反応が一瞬遅れた。

 剱田の斜め前に立っているので、僕は剱田の正中線を捉えているけれど剱田は僕の正中線を捉えていない。こちらからは近く、あちらからは遠い位置。

斜めから狙える脇を狙ってドルヒを突きだした。刃を横にして肋骨の隙間に潜り込める角度にする。

剱田と同じ攻撃を繰り出して確信した。武器を扱うスピードは決して劣ってはいない。ドルヒが僕と剱田が互角だって言った根拠が分かった気がする。

「ナオくん!」

 清美の悲鳴。

 切っ先が肉を捉えた感触があった。


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